Medical Information Network for Divers Education and Research
解答講師 株式会社 潜水技術センター 望月 徹
質問
Q1 日本国内における潜水用呼吸ガスとして使用されているナイトロックスは、酸素32%、36%も酸素扱いでしたが、
法改正後も同様でしょうか?国外のように酸素40%までは空気扱いとはならないのでしょうか?
A1 >従来と変わりません。
今回潜水に関して改正が行われるものは「高気圧作業安全衛生規則(厚生労働省所管)」です。一方、高圧ガスの
取扱い等に関しては「高圧ガス保安法(経済産業省所管)」によって規制されています。高気圧作業安全衛生規則に
は、高圧ガスの取扱い等を定めた条項はありません。
高圧ガス保安法では、ガスを2種類に分けて規制しています。すなわち、ヘリウムや窒素などの9種類の不活性ガス
に空気を加えたものを第一種ガス、それ以外のものは酸素を含め第二種ガスに分類しています。この規則によれば
ナイトロックスは第二種ガスとなりますので、酸素と同様に第二種ガスとしての規制を受けることになります。
なお、酸素に関しては産業用のものはJISで、医療用のものは薬事法で、食品等に使用するものは食品衛生法でそ
の純度が定められており、法令規則上混合ガスが「酸素」として取り扱われることはありません。
Q2 現状ではナイトロックスの仕入れ販売には「高圧ガス第1種販売主任者免状」の所有者を主任として選任し届け
出なければなりませんが、改正後もナイトロックスやミックスガスを使用する際には同じように届出が必要でしょう
か?
A2 >従来通り選任が必要です。
高圧ガスの製造販売については経済産業省が所管する「高圧ガス保安法」により規制されています。同法ではガスを
第一種ガス(不活性ガス+空気)と第二種ガス(第一種以外のガス)に分類しており、第二種ガスの販売に関しては
高圧ガス販売主任者の選任を義務付けています。
第二種ガスはその取扱いを誤ると火災やガス中毒等の重大災害が生じる危険があります。高圧ガス保安法では、
販売者に対してもこれらのガスに対する保安義務を課しており、そのため有資格者の選任が義務付けられています。
Q3 ミックスガスを作る際に酸素を購入しなければなりませんが、薬事法で規制されている現状はどの様にすれば
購入が可能なのでしょうか?
A3>潜水事業者は医療用酸素の購入が可能です。
医療用酸素は、薬事法によって医薬品として登録されています。通常、医薬品の販売先は医師や薬剤師等の資格を
有するもの、または医師の処方箋を有するものに限られますが、医療用酸素は例外的な措置として潜水事業者への
販売が認められています。
厚生労働省医薬食品局通知による「卸売販売業における医薬品の販売等の相手先に関する考え方について」におい
て「スキューダイビング業者、プール営業を行う事業者に対し、人命救護に使用するための医療用酸素を販売する
場合」と記されており、事実上潜水事業者への医療用酸素の販売を許可しています。
したがって、業務として潜水を営む事業者は酸素の購入が可能です。購入先は都道府県知事から医薬品販売業の
許可を受けたガス会社またはガス販売代理店となります。なお医療用酸素の購入は可能ですが、販売(混合ガスとし
て転売する場合を含む)には高圧ガス販売主任者の選任が必要となります。
Q4 法改正で提示された計算式で算出する代わりに、諸外国で使用されている減圧表を使用することはできるので
しょうか?米国・カナダ・ノルウェイなど実績のあるダイブテーブル等 (高所潜水時を含む)
A4>規則の基準を上回るものであれば使用可能です。
改正高気圧作業安全衛生規則では、従来の減圧表(別表第二、第三)が廃止され、代わりに規則に示された計算式
を用いて、減圧浮上方法を決定するように定められています。計算式による値は最低基準とされていますので、それ
を上回るものであれば、規則の計算式によらない減圧表でも使用することができます。
Q5 水深40m以深はミックスガスを用いることとなっていますが、テクニカルダイビングシステム、CCR 、SCR 、等も
「通信回線」「減圧ステージプラットフォーム」確保でき、送気員が呼吸ガスの管理ができ溺水しないため管理が
実施できれば、これ等のシステムも使用できるのでしょうか? 全ての減圧が「水中減圧」
A5>規則を満たすものであれば使用可能です。
高気圧作業安全衛生規則では、「潜水者に携行させたボンベから給気を受けさせるとき」には通話装置や信号索の
使用を求めていません。したがって、特に通信装置を用いなくても、リブリーザーを用いて潜水することは可能です。
また、潜水に使用する呼吸ガスの酸素分圧に関しては、潜水中の吸気分圧が18kPa以上160kPa以下とするよう定め
ています。
リブリーザーの酸素分圧設定値がこの範囲内であれば、減圧ステージも必要ありません。
高分圧酸素曝露では、急性酸素中毒の発症に備える必要があります。代表的な症状の痙攣発作が発現した場合で
も「潜水者が溺水しないような措置を講じた場合」には、酸素分圧の上限を220kPaとすることが認められています。
痙攣発作が生じた場合には、潜降索に掴まっていたり、浮力調整の操作を行うことができなくなりますので、潜水
墜落を防ぐために減圧ステージ等の使用が必要となります。
また、潜水器を口にくわえるタイプでは、マウスピースを噛みちぎる恐れがありますので、フルフェイスタイプとすること
も必要となります。
Q6 諸外国のダイブテーブルを用いて事前の潜水計画が作成した上で、ミックスガスに対応した汎用のダイブコン
ピュータを補助的に使用することは可能でしょうか?
A6>規則の基準を上回るものであれば使用可能です。
改正高気圧作業安全衛生規則に示された減圧浮上の計算式による値は最低基準ですので、その値を上回るもので
あれば使用可能です。
これはダイブコンピュータにおいても同様で、減圧指示値が規則による最低基準を上回るものであれば使用すること
ができます。
規則では、潜水者の氏名、潜水深度や時間、使用する呼吸ガス並びに減圧浮上方法等を明記した作業計画を事前
に作成し、関係者に周知することを求めています。
潜水の経過から減圧計算を行うダイビングコンピュータでは、事前に減圧計画を策定することが困難ですので、
補助的に使用することが良いと思います。
Q7 テクニカルダイビングシステム、CCR 、SCR 、等は、「通信」が確保できていても送気員はガスの供給について
管理できないとみなされ、使用できない可能性があるのでしょうか?
A7>送気員の配置がなくても使用可能です。
高気圧作業安全衛生規則では、「潜水者に携行させたボンベから給気を受けさせるとき」には、通信設備の使用や
送気員の配置は義務付けていません。
したがって、リブリーザーを用いる場合には「通信の確保」や「送気員によるガス供給の管理」がなくても、潜水するこ
とが可能です。
ただし、「潜水者に携行させたボンベから給気を受けさせるとき」には、潜水者支援のために潜水海域を監視する者
(監視員)の配置が必要となります。
Q8 ・メンブレンで製造する「高濃度酸素」は、酸素扱いになるのでしょうか?
A8>「酸素」として取り扱われることはありません。
酸素は JIS や薬機法でその純度が規定されており、気体分離膜(メンブレン)によって空気中の酸素を除去し相対的
に酸素濃度を高めた所謂「酸素富化空気(oxygen enriched air)」が「酸素」として取り扱われることはありません。
高圧ガス保安法では、ガスを「第一種ガス(不活性ガスと空気)」と「第二種ガス(酸素等第一種ガス以外のガス)」に
分類しています。
第一種ガスと第二種ガスを混合したガスは「第二種ガス」と分類されるため空気に酸素を加えた酸素富化空気は
第二種ガスとなり、酸素と同等の取り扱いが求められます。一方、メンブレンを用いた酸素富化空気は、使用する
材料が空気(第一種ガス)のみであることから、その取扱いが多少曖昧となっている部分があります。
メンブレン方式で製造されたナイトロックスの取り扱いが都道府県によって異なるのはこのためです。しかしながら、
近年では、原料が空気であっても、製造されたガスは空気とは全く異なることから、「第二種ガス」として取り扱われる
方向に進みつつあります。
ナイトロックスがレジャーダイビングに広く利用されている沖縄県では、第二種ガスに準じたものとして取り扱うよう
指針が示されています。
他の都道府県においても、今後は沖縄県のような対応が図られていくものと思います。
以上
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