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論文 83



 



     ダイバーによる水難救済会救難所としての活動と潜水事故の傾向


                        村田 清臣   静岡地区水難救済会 静岡広域DRS救難所 所長







  概要

  1.日本水難救済会とDRS 救難所の紹介
  2.官民合同水難救助訓練・連絡会
  3.静岡県東部ドクターヘリとの合同勉強会
  4.インストラクター向けの講習会
  5.レジャーダイビング事故の状況と分析



 1.日本水難救済会と DRS 救難所の紹介

    日本水難救済会は、沿岸海域で遭難した人や船の救助を行う民間ボランティア救助員を支援すると
   ともに、洋上の疾病船員等に対する救急医療事業を運営する団体である。全国の
臨海都道府県に民間
   ボランティア団体である40の地方水難救済会が設立されており、これらの傘下にある救難所及び同
   支社が全国に1,300か所以上設置され、総勢約51,000人の救助員が所属している。

    静岡地区水難救済会は伊豆小型船舶協会・マリーナ関係者らを中心に構成され、日ごろから海上警
   備・警戒を実施しして水難事故防止に取り組んでいる。現在9か所の救難所と4か所の支所があり、
   救助員は約220人、救助船が22隻所属している。


          




      静岡広域 DRS 救難所

      2016年4月から、認定NPO法人アンダーウオータースキルアップアカデミー(以下 UWSUA)は、
   水難救済会の救難所として承認された。


                       



        UWSUA の会員68のうち、救助員として登録されているのは45名。レジャーダイビングの
    ダイブマスター以上の資格と潜水士の資格を所持していて、海上保安庁が講師の潜水捜索訓練の
    修了者が救助員となっている。


        DRS救難所所属の救助船は、熱海・北川・南伊豆・松崎に合計4隻ある。伊東地区では救助船が
    ないため、伊豆地区水難救済会(いとう漁業協同組合)所属の救助船にDRS救助員が
乗船し協力し
    て救助活動を行っている。



         

         


         

               

               

               

               





 2.官民合同水難救助訓練・連絡会

      日頃から各地で、消防・海上保安庁・警察・自治体・漁業協同組合等の水難救助に関係する機関等
   と一緒に、合同訓練や連絡会を開催し「顔の見える関係」を構築している。救助の際、これらの関係
   機関との連携がうまく取れないと、緊急連携システムの稼働に問題が生じる。日頃からの、訓練・連
   絡会等で連携を強化しておくことが、事故発生時に要救助者を生存させるカギになる。


               

               

  

         

 

               

               

               





 3.静岡県東部ドクターヘリとの合同勉強会

    2011年より、順天堂大学医学部附属静岡病院・静岡県東部ドクターヘリチームと合同で、
   ダイビング事故発生時の対応について合同勉強会を開催し、ダイビング事業者の取りまとめ等を
   行い、ドクターヘリチーム・消防・海上保安部・ダイビング事業者の顔が見える関係を構築して
   きた。


         

        





 4.ダイビングインストラクター向け講習会

    ダイビング事故発生時に、周囲にいる可能性が高いのはダイビングインストラクターである。
   救助・救急処置も日頃から訓練をしておくことが必要になる。



        

 

             

             

             



        ダイビング事故以外への救助

          観光客・釣り人が落水するなど、海が荒れている時でも救助に出ることが多い。風雨や波に
     より声が届かない、夜間で周囲が見えない時などもあり、救助に遅延を招かないような各機関の
     連携強化を進めている。



        



         ダイビング事故への出動

           ダイビング事故の場合、そのほとんどが付近にいた救助員が事故発生に気付き救助活動を
      している。今回報告する18件のダイビング事故は、当 DRS 救難所の45名の救助員が
      関与した。



             

             

             

             

             

             





 5.ダイビングの事故分析


     1 エリア別                事故者総数 18人   

     熱海市内      1人   (  6% )
     伊東市内     14人   ( 78% )
     東伊豆町      1人   (  6% )
     南伊豆町      1人   (  6% )

     静岡県外      1人   (  6% )


   
2 ビーチダイビングかボートダイビングか? 事故者総数 18人

     ビーチダイビング  17人  ( 94% )
     ボートダイビング   1人  (  6% )


     3 性別                  事故者総数 18人

     
男性       11人   ( 61% )
         女性        7人   ( 39% )


   4 年齢別                 事故者総数 18人

                                          男性      /  女性 
     20代    2人  ( 11% )   0       /  2 (11%)
     30代    0人
     40代    6人  ( 33% )   4 (22%) /  2 (11%)
     50代   10人  ( 56% )   7 (39%) /  3 (17%)
     60代   0人


     5 死亡・行方不明・生存          事故者総数 18人

     死亡      5人   ( 28% )
     行方不明    1人   (  6% )
     生存     12人   ( 67% )


   6 グループか単独か?           事故者総数 18人

     グループ   17人  ( 94% )
     単独      1人  (  6% )


   7 インストラクター同行か否か?      グループ潜水 17人

     ショップインストラクター同行   14人  ( 82% )

     フリーのインストラクター同行     2人  ( 12% )
        インストラクター同行なし      1人  (  6% )


   8 認定等コース中かツアー中か?      事故者総数 18人

     認定等コース中       3人  ( 17% )

     ツアー中(単独も含む)  15人  ( 83% )




   まとめ

    ダイバーの方々にとってダイビングは楽しみであり、普段のストレス発散にお酒も美味しく、仕事以外の仲間達と盛り上が
   り、睡眠不足になってしまう。このような場合、ダイビングは安全な遊びではなくなる。事故を起こしては大変である。


    今回の事故分析の中で感じたことは、自分の体調管理、健康診断を受けて何か異常がある場合には、
  ドクターの注意を守る必要がある。前日の飲酒は控えめにし、睡眠を十分にとらなければならない。

  
潜水直前の体調に気を付けること。車も新車購入して時がたてば古くなり、無理をすると壊れる。
  人間も同様である。留意しつつ、今後も楽しいダイビングを続けて頂きたい。