Medical Information Network for Divers Education and Research



論文 40



 教育講演


 レジャーダイバー10年間の潜水事故分析 (平成11年度ー平成20年度)


                                 毛利 元彦   日本海洋事業株式会社








 はじめに


 2000年以降 C カード取得者の顕著な増加は、主に中高年者の顕著な増加である。40歳代以上のダイバー比率
は、2000年以前の10%前後と比較して2000年以降は20%を越えており、それに伴い中高年者のレジャーダイビ
ング愛好者の急激な増加により、潜水事故ならびに潜水死亡事故が増加している1)2)。この事故の内、中高年者によ
る事故が憂慮されている。海上保安庁においても2004年潜水事故防止のための緊急情報3)を発している。

 そこで、安全な快適なダイビングを行うために、平成11年度から平成20年度の財団法人日本海洋レジャー安全・振
興協会が刊行している資料4−13)を基にレジャーダイバーの潜水死亡事故の分析を行った。




 分析資料について


 財団法人日本海洋レジャー・安全振興協会が毎年刊行してい潜水事故分析のうち、平成11年度ー平成20年度
10年間4−13)におけるスキューバダイビング中の事故事例、潜水事故者の年齢・男女別などを使用して分析を行っ
た。




 結果


 図1・図2・図3に示す如く、










 平成11年度については、潜水事故は31例あり、事故者総数は52人で、男性34人(65.4%)、女性18人
(34.6%)でした。
 この潜水事故31例中潜水死亡事故は19例(55.9%)で、潜水事故死亡者総数は20人(38.5%)で、その内訳
は男性16人、女性4人でした。潜水事故31例中10例(32.3%)が単独潜水事故と missing partner 事故で占
められ、単独潜水事故は7例(22.5%)7人全て男性でした。 missing partner 事故は3例(9.7%)3人すべて
男性でした。単独潜水事故7例中6例6人男性が死亡ないし行方不明で、  missing partner 事故は3例中1例、
男性1人が死亡した。


 平成12年度については、潜水事故は30例あり、事故者総数は34人で、男性27人(79.4%)、女性7人
(20.6%)でした。
 この潜水事故30例中潜水死亡事故は11例( 36.7%)で、潜水死亡事故者総数は13人( 38.23%)で、その内
訳は男性10人、女性3人でした。潜水事故30例中10例( 33.3%)が単独潜水事故と missing partner 事故で
占められ、単独潜水事故は6例( 20%) 6人、 missing partner 事故は4例(13.3%)4人で男性3人、女性1人
でした。単独潜水事故6例中2例2人の潜水死亡事故であり、 missing partner 事故4例中3例3人で男性2人、
女性1人が死亡した。

 平成13年度については、潜水事故は22例あり、事故者総数は30人で、男性21人(70%)、女性9人(3
0%)でした。
 この潜水事故22例中潜水死亡事故は11例(50%)で、潜水事故死亡者総数は11名(36.7%)で、内訳は男性8
人(26.7%)、女性3人(10%)でした。潜水事故22 例中7 例(31.8%)が単独潜水事故と missing partner 
故で占められ、単独潜水事故は2例( 9.1% ) 2人男性で、 missing partner 事故5例(22.7%)5人で男性3
人、女性2人でした。単独潜水事故2例中1例1人男性の死亡、 missing partner 事故5例中4例4人で男性2 
人、女性2人が死亡した。

 平成14年度については、潜水事故は22例あり、事故者総数は24人で、男性15人(62.5%)、女性9人
(37.5%)でした。
 この潜水事故22例中潜水死亡事故は13例( 59.1%)で、潜水事故死亡者総数は13人(54.2%)で、内訳は男
性10人(41.7%)、女性3人(12.5%)でした。潜水事故22例中8例( 36.4% ) が潜水単独事故と missing
partner 事故で占められ、単独潜水事故は4例( 18.2% ) 4人すべて男性で、 missing partner 事故は4例
(18.2%)4人すべて男性でした。単独潜水事故4例中3例3人が死亡または行方不明で、 missing partner 
故4例中3例3人が死亡した。

 平成15年度については、潜水事故は47例あり、事故者総数は53人で、男性31人(58.5%)、女性22人
(41.5%)でした。
 この潜水事故47例中潜水死亡事故は23例( 48.9%)で、潜水事故死亡者総数は23人(43.4%)で、内訳は男
性15人(28.3%)、女性8人(15.1 %)でした。潜水事故47例中3例( 6.4% ) が単独潜水事故と missing
partner 事故でした。単独潜水事故は2例(4.3%)2人男性1人、女性1人で、 missing partner 事故は1例
(2.1%)1人女性で、全例死亡事故でした。

 平成16年度については、潜水事故は29例あり、事故者総数は48人で、男性38人(79.2%)、女性10人
(20.8%)でした。
 この潜水事故29例中潜水死亡事故は16例( 55.2%)で、潜水事故死亡者総数は16人(33.3%)で、内訳は男
性13人(27.1%)、女性3人(6.3%)でした。潜水事故29例中9例(31.0%)が単独潜水事故と missing
partner 事故であり、単独潜水事故は2例(6.9%)2人男性で潜水死亡事故でした。 missing partner 事故は
7例(24.1%)7人で、6例6人は男性で、男性6例中3例3人、女性1例1人が潜水死亡事故でした。

 平成17年度については、潜水事故は17例あり、事故者総数は30人で、男性20人(66.7%)、女性10人
(33.3%)でした。
 この潜水事故17例中潜水死亡事故は13例( 76.5%)で、潜水事故死亡者総数は14人(46.7%)で、内訳は男
性11人(367%)、女性3人(10%)でした。潜水事故17例中9例(52.9%)が潜水単独事故と missing
partner 事故で占められ、単独潜水事故は3例(17.6%)3人男性で、 missing partner 事故は6例
(35.3%)7人男性6人と女性1人でした。単独潜水事故3例中3例3人全員が死亡または行方不明、 missing
partner 事故6例中5例6人、男性5人と女性1人の6人が死亡した。

 平成18年度については、潜水事故は37例あり、事故者総数は46人で、男性28人(60.9%)、女性18人
(39.1%)でした。
 この潜水事故37例中潜水死亡事故は9例(24.3%)で、潜水事故死亡者総数は10人(21.7%)で、内訳は男性
8人(17.4%)、女性2人(4.3%)でした。潜水事故37例中6例(16.2%)が潜水単独事故と missing
partner 事故で占められ、単独潜水事故は2例(5.4%)2人男性で、 missing partner 事故は4例(10.8%)
4人男性3人と女性1人でした。単独潜水事故1例は死亡事故につながらなかった。残りの単独潜水事故1例1人と 
missing partner 事故4例4人全員が死亡事故でした。

 平成19年度については、潜水事故は37例あり、事故者総数は42人で、男性22人(52.4%)、女性20人
(47.6%)でした。
 この潜水事故37例中潜水死亡事故は16例(43.2%)で、潜水事故死亡者総数は17人(40.5%)で、内訳は男
性14人(33.3%)、女性3人(7.1%)でした。潜水事故37例中8例(21.6%)が潜水単独事故と missing
partner 事故で占められ、単独潜水事故は4例(10.8%)4人男性で、 missing partner 事故は4例
(10.8%)4人男性3人、女性1人でした。単独潜水事故4例中3例3人が死亡または行方不明、 missing
partner 4例中4例4人全員が死亡事故でした。

 平成20年度については、潜水事故は44例あり、事故者総数は51人で、男性31人(60.8%)、女性20人
(39.2%)でした。
 この潜水事故44例中潜水死亡事故は17例(38.6%)で、潜水事故死亡者総数は18人(35.3%)で、内訳は男
性16人(31.4%)、女性2人(3.9%)でした。潜水事故44例中8例(18.2%)が潜水単独事故と missing
partner 事故で占められ、単独潜水事故は5例(11.4%)5人男性で、 missing partner 事故は3例(6.8%)
3人男性でした。単独潜水事故5例中5例5人全員が死亡または行方不明、 missing partner 事故3例中1例1人
男性が死亡した。



 平成18年度から平成20年度の3年間では、潜水事故が増加しており、それにつれて潜水死亡事故も増加してい
た。
 平成11年度から平成20年度までに日本海洋レジャー安全・振興協会の潜水事故分析に報告された4−13)潜水事
故は316例あり、単独潜水事故 ・ missing partner 事故による潜水事故は77例で24.4%であった。

 単独潜水事故は37例で11.8%、 
 missing partner 事故による潜水事故は40例で12.7%であった。

 この316例の潜水事故で潜水事故者総数は410人で、

 潜水事故死亡例は316例中148例(46.8%)で、
 潜水事故死亡者総数は410人中155人(37.8%)であった。

 単独潜水死亡事故 ・ missing partner 事故による潜水死亡事故者総数は59人で、潜水事故死亡者の38.
1%と高率で発生していることが示唆された。

 単独潜水死亡事故者総数は27人で、潜水事故死亡者の17.4%に発生し、 missing partner 事故による潜水
死亡事故者総数は31人で、潜水事故死亡者の20%に発生していた。




講習中ならびに体験ダイビング有の事故について


 平成11年度において、ダイビング講習参加中並びに体験ダイビング参加中の潜水事故は6例でした。平成11年度
の潜水事故31例中6例(19.4%)で、これらの潜水事故者総数は11人で男性2人、女性9人でした。体験ダイビング
中の潜水事故は1例1人男性でした。この潜水事故6例中3例3人がC カード取得中にインストラクターとの missing
partner による潜水死亡事故に直結していた。

 平成12年度において、講習参加中の潜水事故は1例1人男性で潜水死亡事故でした。体験ダイビング中の事故は
ありませんでした。しかしながら、平成12年度の潜水事故30例中1例(3.3%)において、50歳代男性で、基本がで
きていない状態でのダイビングを体験して潜水事故を起こし、潜水死亡事故には至らなかった例が1例ありました。

 平成13年度において講習参加中の潜水事故は3例でした。平成13年度の潜水事故22例中3例(13.6%)3人
(男性2人、女性1人)で、この3例中2例男性1人と女性1人が潜水死亡・行方不明事故でした。体験ダイビング中の
事故はありませんでした。

 平成14年度において、講習参加中の潜水事故が4例4人(男性1人、女性3人)、体験ダ
イビング中の潜水事故が1例1人男性の合計5例5人でした。平成14年度の潜水事故22例中5例(22.7%)で、講
習会参加中の4例中3例3人女性が死亡した。

 平成15年度において、講習参加中の潜水事故が2例2人女性で、そのうち1例は、指導員養成のための講習中に
おける潜水事故1例1人でした。先の講習会中の1人が潜水死亡事故でした。体験ダイビングでの事故報告はあ
りませんでした。平成15年度の潜水事故47例中2例(4.2%)でした。

 平成16年度において、講習参加中の潜水事故は1例15人で(20歳代男性と年齢不詳の男性14人)で全員潜水死
亡事故には至りませんでした。体験ダイビングでの事故報告はありませんでした。平成16年度中の潜水事故16例中
1例(6.3%)でした。

 平成17年度において、ダイビング講習参加中の潜水事故はありませんでした。体験ダイビング中の潜水事故は2例
2人女性で、死亡事故に至りませんでした。平成17年度の潜水事故17例中2例(11.8%)でした。

 平成18年度において、ダイビング講習参加中の潜水事故は3例3人(男性2人、女性1人)で、3例中1例1人男性が
死亡した。体験ダイビング中の潜水事故は2例2人(男性1人、女性1人)で、2例とも死亡事故に至りませんでした。平
成18年度の潜水事故38例中5例(13.2%)でした。これらの潜水事故者総数は5人で、男性3人、女性2人でした。

 平成19年度において、ダイビング講習参加中の潜水事故は4例4人(男性1人、女性3人)、体験ダイビング中の潜
水事故は1例1人女性でした。講習会参加中の4例中1例1人男性が死亡した。平成19年度潜水事故37例中5例(1
3.5%)でした。

 平成20年度において、ダイビング講習参加中の潜水事故は3例3人(男性1人、女性1人)、体験ダイビング中の潜
水事故は2例2人(男性1人、女性1人)でした。ダイビング講習会参加中の潜水事故3例3人全員が潜水死亡事故で
した。平成20年度の潜水事故44例中5例(11.4%)でした。


 平成11年度から平成20年度まで講習参加中ならびに体験ダイビング中による潜水事故は、10年間の潜水事故
316例中36例(11.4%)で、この36例中15例(41.7%)が潜水死亡事故につながっておりました。この潜水事故
中に講習生1 人と指導員1人で講習を行っていたのは1例のみでした。これらの事故例よ
り、マスククリアーもできない技術の未熟な講習生を深みに連れて行き講習を行ったり、ボートエントリーを行ったりして
いることで、講習を行うにあたり、各指導団体における指導員への安全管理指針・安全管理マニュアルの改正が必要
と考えられる。日本における各指導団体による個々の指導要領でなく、統一された指導要領、安全管理指針、安全管
理マニュアルの作成が急務と考えられた。




潜水事故年齢・男女別について


 図4に示す如く、平成11年度―平成20年度の10年間の潜水事故例は316例あり、その内の潜水死亡事故例は1
48例で潜水死亡事故の割合は46.8%に上っていた。この316例の潜水事故で、事故にあった総人数は410人で、
男性は267人(65.1%)で、女性は143人(35.5%)の割合で2/3が男性であった。

 この潜水死亡事故者総数は、155人で、潜水事故に占める割合は37.8%であった。このうち、男性の潜水死亡事
故者総数は121人で78.1%の割合を占めて、女性の潜水死亡事故者総数は34人21.9%であった。






 各年齢の潜水死亡事故者と潜水事故者の割合は、

 10歳代では 0人/ 7人で0%、
 20歳代では 28人/87人で32.2%(男性の潜水事故死亡者の占める割合は15人で17.2%、女性の潜水事
          故死亡者の占める割合は13人で14.9%)、
 30歳代では 33人/115人で28.7%(男性の潜水事故死亡者の占める割合は23人で20%、女性の潜水事故
          死亡者の占める割合は10人で8.7%)、
 40歳代では 38人/84人で45.2%(男性潜水事故死亡者の占める割合は35人で41.7%、女性の潜水事故
          死亡者の占める割合は3人で3.6%)、
 50歳代では 37人/74人で50%(男性の潜水事故死亡者の占める割合は33人で44.6%、女性の潜水事故死
          亡者の占める割合は4人で5.4%)、
 60歳代以上 では19人/37人で51.4%(男性の潜水事故死亡者の占める割合は15人で40.5%、女性の潜
          水事故死亡者の占める割合は4人で10.8%)であった。

 若年層である10歳代から30歳代までの潜水死亡事故者の割合は61人/209人で29.2%であったが、壮年・高
年齢層である40歳代以上での潜水死亡事故者の割合は94人/195人で48.2%と高率であった。すなわち、40歳
代以上の潜水事故では、潜水死亡事故につながる度合いが急上昇することが示唆された。

 潜水事故の年齢別割合は、

 10歳代では 7人で1.7%(男性の占める割合は3人で0.7%、女性の占める割合は4人で1.0%)、
 20歳代では 87人で21.5%(男性の占める割合は46人で11.4%、女性の占める割合は41人で10.1%)、
 30歳代では 115人で28.5%(男性の占める割合は68人で16.8%、女性の占める割合は47人で11.6%)、
 40歳代では 84人で20.8%(男性の占める割合は62人で15.3%、女性の占める割合は22人で5.4% 、
 50歳代では 74人で18.3%(男性の占める割合は51人で12.6%、女性の占める割合は23人で5.7%)、
 60歳以上  では37人で9.2%(男性の占める割合は28人で6.9%、女性の占める割合は9人で2.2%)、

 この他に、平成16年度に男性で年令不詳者男性グループ14人が潜水事故にあっている。潜水事故の年齢別で
は、20歳代男女・30歳代男女・40歳代男性・50歳代男性で潜水事故の割合が10%を超えていた。

 潜水死亡事故者の年齢別割合は、

 10歳代では 0%(男女とも0%)、
 20歳代では 28人で18.1%(男性の占める割合は15人で9.8%、女性の占める割合は13人で8.4%)、
 30歳代では 33人で21.3%(男性の占める割合は23人で14.8%、女性の占める割合は10人で6.5%)、
 40歳代では 38人で24.5%(男性に占める割合は35人で22.6%、女性の占める割合は3人で1.9%)、
 50歳代では 37人で23.9%(男性の占める割合は33人で21.3%、女性の占める割合は4人で2.6%)、
 60歳以上  では33人で12.3%(男性の占める割合は15人で9.7%、女性の占める割合は4人で2.6%)であ
          った。

 各年齢の男女別の潜水死亡事故例と潜水事故の割合は、

 10歳代    男性で0/3、女性でも0/4、
 20歳代    男性では15/46 で、その割合は32.6%、女性では13/41 で、その割合は31.7%、
 30歳代    男性では23/68 で、その割合は33.8%、女性では10/47 で、その割合は21.3%、
 40歳代    男性では35/62 で、その割合は56.5%、女性では3/22 で、その割合は13.6%、
 50歳代    の男性では33/51 で、その割合は64.5%、女性では4/23 で、その割合は17.4 %、
 60歳以上   の男性では15/28 で、その割合は53.6%、女性では4/9 で、その割合は44.4%であった。


 これらの結果から、潜水事故に対して潜水死亡事故の確率が高い年齢は、20歳代男女・30歳代男性で30%を超
えており、60歳代以上の女性では40%を超えていた。さらに、40歳代以上の男性では50%を超えていた。他方、
平成18年度・19年度・20年度の3カ年の潜水事故の年齢別・男女別割合では、20歳代女性、30歳代男性・女性、
40歳代男性の潜水事故並びに死亡事故例が増加しており、憂慮すべき問題と考えられた。

 これらの年齢層の増加は、夜行日帰り・飲酒・睡眠不足などの健康体調管理の無理解とダイビング経験に伴うインス
トラクターの指示の無視などによる潜水事故の多発とも考えられた。また、以前より指摘されている40歳代以上の壮
年・高齢者の潜水事故も減少傾向は認められていなかった。




考察


 平成11年度から平成20年度までに日本海洋レジャー安全・振興協会の潜水事故分析に報告された4−13)潜水事
故は316例あり、そのうち単独潜水事故は37例11.7% 、 missing partner による潜水事故は40例12.7%
で、これら単独潜水事故・ missing partner による潜水事故は合計77例24.4%であった。

 この316例の潜水事故での潜水事故者総数は410人で、潜水事故死亡例は316例中148例46.8%で、潜水事
故死亡者総数は410人中155人37.8%であった。このうち単独潜水事故死亡者数は155人中28人18.1% 、 
missing partner による潜水事故死亡者数155人中31人20%で、単独潜水事故死亡者・ missing partner 
による潜水事故死亡者総数は155人中59人38.1%と高率に発生していることが示唆された。

 DANアメリカの9年間の報告でも14)全潜水事故死亡例の5− 20 %が単独潜水事故で占められており、Yamami ら
2)の報告でも潜水死亡事故のうち45.1%が単独潜水事故と missing partner 事故で占められていることから、
レジャーダイビングにおいてはバデイーシステムがいかに重要で大切かを本報告からも示唆される。

 平成11年度から平成20年度までの講習参加中ならびに体験ダイビング中の潜水事故は、この10年間の潜水事故
総数316例中36例11.4%あり、この36例中15例41.7%の高率で潜水死亡事故に繋がっていた。これら講習参
加中・体験ダイビング中の事故では、マスククリアーも出来ない技術の未熟な講習生を深みに連れて行き講習を行い
またボートエントリーを行って潜水事故に直結していた。この36例の中で指導員1名講習生1名での講習を行っていた
例が1例のみであった。

 これら講習中、体験ダイビングでの潜水事故を撲滅するためには、中高年層のCカード取得講習内容の充実・インス
トラクター1名に対する講習生の人数の制限・バデイーシステムでのバデイー間の距離の徹底化・天候異変に対する対
応などの指導団体間で統一されたインストラクターへの安全管理指針・安全管理マニュアル・指導マニュアル・インスト
ラクター教育指針などの作成が急務と思われた。またこれと同時に講習生の健康管理、体調管理などの徹底とショッ
プ・インストラクターなどが健康管理指針の徹底化を図ることも必要であることが示唆された。

 平成11年度から平成20年度の潜水事故例は316例で、潜水事故者総数は410人で、男性267 人65.1%、
女性143人34.9%の割合で2/3 が男性であった。このうち、10歳代―30歳代の若年層の潜水事故者は209人
51.0%、40歳代以上の中高年層の潜水事故者は195人47.6%、年齢不詳者が14人3.4%でした。潜水事故
死亡者総数は155人で潜水事故者に占める割合は37.8%でした。この潜水事故死亡者のうち、10歳代から30歳
代までの若年層は61人でその割合は61人/209人29.2%であった。一方、40歳代以上の中高年層は94人でそ
の割合は94人/195 人49.2%と中高年層で高率に発生していた。Yamami ら2)は、潜水事故死亡者の中高年層
の示す割合が45.5%と報告している。本報告ではその割合が49.5%と増加が認められた。

 この事実は2000年以降40歳代以上の中高年層ダイバー人口の増加により中高年層の潜水事故死亡者も増加し
ていることが示唆され、中高年層の潜水事故は、潜水死亡事故に直結していることが伺え知る報告と推測された。




結論


1. 平成11年度から平成20年度までに日本海洋レジャー安全・振興協会の潜水事故分析による潜水事故は316
   例で、そのうち単独潜水事故ならびに missing partner による潜水事故が77例24.4%あった。この316
   例中148例46.8%が潜水死亡事故例でした。潜水事故者総数は410人で、そのうち潜水事故死亡者総数は
   410人中155人37.8% でした。単独潜水事故死亡者と missing partner による潜水事故死亡者は77人
   中59 人76.6%と高率に発生していた。


2. 潜水事故者総数410人のうち男性は267人65.1%、女性は143人34.9%の割合で男性が2/3 を占めて
   いた。


3. 10 歳代から30歳代までの若年層の潜水事故者は209人51.0%、40歳代以上の中高年層の潜水事故者は
   195人47.6%、年齢不詳者が14人3.4%でした。しかしながら、潜水事故死亡者は、10歳代から30歳代の
   若年層では61人、その割合は61人/209人29.2%で、40歳代以上の中高年層では94人で、その割合は
   94人/195 人48.2%と高率で、中高年層の潜水事故は潜水死亡事故に繋がることが示唆された。


4. C カード取得講習中ならびに体験ダイビング中の潜水事故がこの10年間に316例中36例11.4%で、潜水
   死亡事故例は36例中15例15人でした。




謝辞


本報告の資料を快く提供いただきました日本海洋レジャー安全・振興協会に心より感謝申し上げます。





参考文献

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  :日本海洋レジャー安全・振興協会、Divers Alert Network Japan 2003
8.平成15年度潜水事故の分析
  :日本海洋レジャー安全・振興協会、Divers Alert Network Japan 2004
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  :日本海洋レジャー安全・振興協会、Divers Alert Network Japan 2005
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  Social Sports Center, Tokyo, 25−30,1999
17.平成15年―16年8月までのレジャーダイビング事故の状況
  :ダンジャパン会報、29、2−5,2004






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