Medical Information Network for Divers Education and Research



論文 41



 教育講演


 ダイバーの,エイジングにおける動脈硬化症予防と管理の重要性



                                 小泉 章子     江東病院 循環器内科






【はじめに】

 エントリーレベルダイバーの年齢構成の推移において、40歳以上の中高年者の数が特に2000年以降、顕著に増
加しており、日本におけるダイビング団体の統計では、ほぼ四分の一に迫っているといわれる。一方、2007年度レジ
ャーダイビングでの事故例の年齢分布でも40歳代以上が52%と半数を超え、特に死亡事故例の6割程度が40歳以
上であり、若年層と比較して高くなっている。今回、加齢(エイジング)に伴う動脈硬化症とダイビングにおけるリスクマ
ネージメントを、事故例の検証と合わせて検討する。



動脈硬化症とは

 動脈硬化(arterio-sclerosis)とは動脈が肥厚し硬化した状態を言い、加齢とともに進展する。健康と考えられる人で
も、青年期から徐々に動脈硬化による内膜肥厚は始まっている。最近の日本人の死因統計では、心疾患16%、脳血
管障害12%であり動脈硬化に伴う疾患による死亡率の割合が非常に高いことが分かる。

 動脈硬化には内膜下に粥腫が蓄積する粥状動脈硬化と、小動脈の壁が厚くなり内腔が狭くなる細動脈硬化がある
が、ダイビングに直接かかわってくるのは、致命的となりうる脳梗塞や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)を引き起こす
粥状動脈硬化症である。



動脈硬化の危険因子

 動脈硬化の危険因子として、動脈硬化学会のガイドラインでは、高LDL血症、低HDL血症、加齢、糖尿病、高血圧、
喫煙、家族歴が挙げられている。

 これらの危険因子が重複すると、動脈硬化に伴う疾患の発生率が相乗的に増加すると言われる。陸上スポーツより
も疾患発生時の致命率が高くなるダイビングを行うにあたり、ダイバーは上記項目のひとつでも当てはまる場合には
2次的な精査を実施すべきであると考える。

 動脈硬化は、同様の生活習慣を持つ人が同様に動脈硬化症を発症するわけではなく、遺伝的素因と環境因子(過
食、運動不足など)が相互作用をもたらすため、個人差が非常に大きい。そして、動脈硬化は徐々に進み全身の血管
病を引き起こす原因となるため、加齢に伴い潜在的に(自覚症状のない状態でも)疾患を有する割合は高くなっていく。



【ダイバーにおいて人間ドックでの動脈硬化スクリーニング】

 ダイバー個人が現在、動脈硬化性疾患を有しているかどうかを、医療機関や健診・人間ドックなどの評価なしに自己
判断できる材料は、残念ながら非常に乏しい。

 しかし、近年メタボリック症候群という言葉が一般的になってきたこともあり、健康診断や人間ドックを受ける機会は増
え、健康に対する意識は高くなりつつある。

 ダイバーには、健康診断や人間ドックを活用して自分の健康状態を積極的に確認し、下記に詳述するプラスアルファ
での検査項目を受けることを推奨する。それにより生活習慣病を改善し、ダイビング中の動脈硬化性疾患の発症を防
ぐべく意識することを促したい。

 動脈硬化性疾患が存在する可能性を探る方法として、一般的に人間ドックで行われているのは、

 ・食事の習慣(1日の平均摂取カロリーや塩分など)
 ・運動の習慣
 ・喫煙の有無
 ・家族歴(動脈硬化性疾患を持つ家族の有無)

 などの問診が最初に行われる。

 動脈硬化に関して特に喫煙の有無は重要である。また、肥満も重要な危険因子であるため腹囲の測定が行われて
いる(基準値:男性>85cm,女性>90cm)。そして、採血によりLDL、HDLコレステロール値や血糖、HbA1cなど脂質や
糖尿病に関するデータが測定される。

 安静時心電図では不整脈の有無や波形の異常をチェックする。胸部X線写真や胸腹部CTの観察では、大動脈や大
動脈弁の石灰化、蛇行などが評価され、内臓脂肪面積の診断も可能である。

 人間ドックで心臓ドックや脳ドックと言われる、虚血性心疾患や脳動脈硬化の程度を評価する項目は、特にダイバー
に推奨すべきと考える。

 人間ドックの項目としてはオプションとして施行されることが多い項目であるが、心臓ドックには安静時心電図のみな
らずドレッドミルやダブルマスター、エルゴメーターなどの運動負荷心電図検査や心臓超音波検査などが含まれ、日常
生活では表出されなかった動脈硬化性疾患が発見される機会が得られる。

 また心臓超音波検査では特に息こらえを行って施行した際に卵円孔開存(PFO)を描出できる場合がある。

 脳ドックではMRI、MRA、PETなどが行われ、脳動脈硬化の程度が評価できるだけでなく、無症候性脳梗塞や脳動脈
瘤の有無、脳血流の程度などを確認することができる。

 その他、診断機器の進歩により、動脈硬化の程度を判断する良い指標と言われる頸動脈超音波検査、橈骨‐足背脈
伝播速度などを備えている施設もある。

 動脈硬化のスクリーニングとして人間ドックや健康診断の結果でどこまで判断できるかは、どの検査を行ったかに依
存するため、ダイバー(特に中高年ダイバー)は、積極的、定期的に心臓・脳血流など臓器別に評価する項目を含めチ
ェックを行うことを強く勧める。動脈硬化性病変が様々な血管に発見されている場合、まれに急激に狭窄度が進展する
可能性があることがあるため、定期的なチェックは欠かせない。



ダイバーに必要な健康管理

 ここでは、前述した医療機関や健診機関での項目以外で、ダイバーが自己管理すべき項目を挙げる。


1)禁煙

 ダイバーの喫煙は、動脈硬化を促進させるのみならず心肺機能の低下やCOPDの原因となりうること、気道過敏性に
よる喚起障害が惹起されること、さらには喀痰の分泌が多量であることに伴い浮上時にエアートラップによりAGEの危
険性が増すことが示唆されており、完全に中止すべきである。2年間の禁煙で心血管イベント発生率が低下するという報
告もある。


2)運動(トレーニング)

 規則的な身体トレーニングを行うと人体の組織に適応現象が起こり、動脈硬化の危険因子を取り除くことで進行を抑
え、生活習慣病にかかりにくくなる。 

 ダイバーにとってのトレーニングの目的は、生活習慣病の予防のみならず、持久力、筋力、柔軟性や調整力を獲得
することにもある。

 持久力トレーニングが適切に行われると心臓血管系および代謝系に有効な結果が得られ、ひいては動脈硬化の進
行を遅らせ、その後の心血管疾患の危険性が減少することが知られている。

 心疾患予防の効果を得る上ではスポーツによるエネルギー消費量1200〜2000Kcal を追加消費する必要がある
と言われ2)。

 日常に取り入れるトレーニングの強度としては、心血管系の最大運動耐容能に対し60%を課すことが必要である。

 具体的におよその目安として、トレーニング時心拍数は【180−暦年齢】を目安にする(ジョギングでは適正心拍数が
高めになるので【200−暦年齢】まで上げてよい)1)。

 1回のトレーニングは30−45分の持続時間が望ましく週に3〜4回実施する。例えば1回に2時間かけてトレーニン
グするよりも、3回に分けて各40分実施する方が効率は良い。

 トレーニングを行うことで自律神経の調節効果も認め、機能的で末梢性(心臓外)の適応が起こるため、加齢に伴う
末梢の血管抵抗増加に対しても改善が見込める。

 ここで、ダイバーの場合は陸上スポーツと比較して、さらに潜水前後や潜水中に不慮の出来事で突発的に身体的に
負荷がかかる場合があると想定すべきであろう。最大運動強度として、より負担のかかる運動量にも対応できる体力
が求められるスポーツである。

 日本高気圧環境・潜水医学会が提唱する「メディカルチェックガイドライン」では、ダイビングに必要な運動強度は、運
動負荷試験で13Mets 以上(2500mを12分以内で走る)が基準であると示されている4)。

 中高年ダイバーに対して、現実的には非常に厳しい基準であることは否めない。ここで、通常レジャーダイビングには
4〜8Mets(1600mを12分で歩行もしくはジョギング)の運動量が必要といわれる。

 まずはその値を超える「9Mets(毎分140mの速度で数分間のジョギングができる程度)以上の運動が十分に可能な
運動機能であること」を当面の目安にすることが現実的ではないかと思う。最終的には13Mets を目標にトレーニング
を行うことが望ましい。

 現在、日本において中高年ダイバーが増加しているにもかかわらず、大半のダイバーの運動不足の現状は否めな
い。適正で規則的な運動は、職業ダイバー、レジャーダイバーともに必要であり促進されるべきと考える。


3)血圧の管理

 加齢に伴い動脈硬化によって血管が弾性力を失うと血圧は上昇する傾向となる。高血圧はほとんど自覚症状がない
ため、気づかずに継続すると重篤な動脈硬化性疾患の原因となるため、サイレントキラーとも呼ばれている。

 日本高血圧学会の分類では、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)は、至適血圧:SBP<120かつDBP<80、
正常血圧:SBP<130かつDBP<85、正常高値血圧:SBP130-139またはDBP85-89、そして、SBP>140または
DBP>90を高血圧の分類としている。4)
 
 高血圧が持続した状態は心不全になりやすい傾向にある。高血圧という慢性負荷で心筋が徐々に変化し、左室の壁
が肥厚し心肥大に至る。心肥大は心臓の収縮機能は保たれているが拡張機能が低下するという現象が起こることが
ある。

 その上心肥大により心筋の酸素消費量が増加し冠予備能が低下する。

 心筋が拡張機能の低下をきたしている場合、一過性の体液量の増加や不整脈による脈拍の増加などの負荷が誘因
となって心不全が起こり、それに伴い虚血性心疾患も引き起こす可能性もある。

 例えば中高年ダイバーで長期間高血圧があったにもかかわらず自覚がなく、コントロールされないままダイビングをし
た場合、潜水前の水面移動の際に突然心不全や虚血性心疾患を引き起こすようなケースでは、拡張不全による心不
全となる機序も考えるべきであろう。

 一方で、ダイビングは血圧に関して独特な変化をもたらすスポーツであり、水に潜ると、潜水深度に比例して水圧(外
圧)により動脈血圧が上昇する。例えば-1mの深度の潜水でも収縮期血圧が75mmHg上昇したという実験報告もあ
る。

 これは心臓自体の問題ではなく外圧に伴う変化である。

 また、運動負荷・潜水・寒冷などによっても血圧変動(急上昇)が引き起こされる。

 加えて、潜水反射による除脈に対する反応として一過性の血圧の上昇がみられる5)。

 潜在的に不整脈を持っていたり、前述のように高血圧などの慢性的な心負荷がある場合、潜水反射によって危険な
心拍の乱れを引き起こすこともある。

 このようにダイビングは血圧を上昇させる因子を多く持つスポーツであることが分かる。血圧の急激な上昇は脳出血
など脳血管障害イベントの発症も高めることはいうまでもない。

 前述の日本高血圧学会の分類において、動脈硬化の危険因子を持たない場合、若年者・中年者の目標血圧は140
/85未満である。糖尿病や腎障害がある場合は130/80未満である。

 しかしダイバーに関しては、血圧上昇に伴うダイビング中の危険を回避するため、日常の血圧管理はより厳密に行う
べきと考える。

 ダイバーの至適血圧を言及するデータは乏しいが、ダイバーは日常の血圧を少なくても「正常血圧」にコントロールす
べきではないかと考える。また、ダイビング前の血圧が140/85以上の場合はダイビングを控えることが安全性管理
につながるのではないだろうか。

 血圧の上昇を予防するには、まず

 食生活で塩分摂取量を控えることが 第一である。次に定期的な運動が有効である。

 血圧に対する身体トレーニングの効果を示した報告を示す。最大運動能力の60-90%の運動強度で30分〜120
分の運動を3カ月〜8カ月施行した際のデータとして、運動負荷を加えた時の血圧が、平均・収縮期血圧で12mmHg、
拡張期血圧では8mmHg低下したという報告がある6)。

 規則的な運動により、高血圧で見られる慢性的な交感神経の緊張状態が改善され末梢血管抵抗の低下も起こりうる
ため7)と説明ができ、日常生活での運動習慣により、運動負荷時の血圧低下が期待できる。

 ダイビングにおいて規則的な身体トレーニングは、ダイビング中に予想外の身体的負荷を強いられた場合の極度な
血圧上昇を軽減させ、事故予防につなげる効果があるといえるだろう。


4)肥満(特に内臓肥満)

 肥満は食生活や身体活動とも関連が深く、食事内容の見直しを含めるコントロールが推奨される。特にBMI(Body 
Mass Index)=身長【m】÷(体重【kg】)(2)>25の場合肥満と判断される。

 メタボリック症候群の項目にも腹囲の測定が行われている(基準値:男性>85cm,女性>90cm)。食事習慣の修正
項目としては、食塩制限、野菜・果物の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。アルコール制限
(エタノールで男性<20-30ml、女性<10-20ml)など改善を行う。
 


「事故例から学ぶこと」

具体的な事例を振り返り、その症例から推察される原因や予防法を検証する。
(あくまで後ろ向きの検証であることを書き添える。)


1)30歳代男性
 ビーチエントリーでの潜水実習で、沖合い約40m(水深約3m)の実習位置のまで海面移動後、当人が疲れ
ている様子であったため、フロートへ掴まらせ仰向けとなるよう指示したが、再び声をかけたところ呼吸がない
のを確認した。

 講習生や初心者ダイバーなど、海に慣れていない場合、器材を背負っての水面移動は予想以上に身体的ストレスや
精神的ストレスがかかると考えられる。

 このケースの場合、具体的な疾患としては虚血性心疾患が第一に挙げられる。その他の鑑別として、運動による致
死性の不整脈から心停止という経過も鑑別に挙がる。その場合、陸上での運動負荷時に動悸発作や失神発作を起こ
しているケースもあり、ダイビング前の確認で確認できることもある。

 前述のように血圧・脈拍などが大きく変化するダイビングでは、海面においてもすでに心負荷はかかっており、その状
態からさらに運動を行うことで負荷が増大、心不全や虚血性心疾患が発症する可能性は十分にある。

 一般的に30歳代と比較的若い年代で、基礎に動脈硬化性の疾患を抱えている可能性は低いと思われがちである。

 しかし、食生活や体格が欧米化している現在、生活習慣病から起こる動脈硬化性の疾患の発症年齢が若くなってき
ている。実際、30歳代で喫煙をし、肥満や高血圧など生活習慣病の素因を持つダイバーも多く、虚血性心疾患が隠れ
ている可能性があるのも事実である。

 なおこのケースのように、本人・バディ・引率者が、体力的な負荷が大きいと感じた場合には、積極的に長めの休息
を取ることが勧められる。水面移動後、無理に潜水を開始せず、呼吸を整え心拍を安定化させることで精神的にも余
裕ができ、心肺にかかる負荷軽減につながると考える。


2)40歳代男性

 同日4回目のダイビング中、水深3m付近で該人が胸を指し「苦しい」との合図をインストラクターに送ったた
め直ちに浮上した。浮上直後、当人が引き続き苦しさを訴え、病院への移動中に嘔吐。ダイビング機材に異常
は認めなかった。医療センターへ搬送後、死亡が確認された。原因は虚血性心疾患と診断された。

中高年(40歳)男性、頻繁なダイビング計画で身体的に疲労が出てくる時間帯に胸の症状が出現した事例。このケース
では水中で苦しさを訴えた時点で気胸や肺水腫が鑑別として考えられ、また急浮上した場合にはエアエンボリズムも考
えうる。40歳代であると虚血性心疾患も十分に考えられる。

 結果的に病院で虚血性心疾患と診断されており、水中で虚血性心疾患による発作が起こった事例である。疲労に伴
う身体的・精神的ストレスや水面休息中の水分摂取不足による脱水などが発症に関与した可能性がある。

 1日4回の反復ダイビングとなると、十分な水面休息時間や疲労回復時間が取れていない場合も多く、減圧症に罹患
する可能性も上昇する。減圧障害や心疾患の発症には脱水が大きな誘因となる。特に反復ダイビングをする場合、水
面休息中の水分摂取は十分に行うべきである。時間的・身体的に余裕のある計画を心掛けたい。


3)40歳代女性

 沖合い約50m(水深約6m)でビーチダイビングを約30分行い浮上した。当人が最後尾で岸に向かって泳ぎ
始めたが、先導のインストラクターが岸にたどり着き後方を確認したところ、浮上場所近くで当人がBCジャケッ
トを膨らませレギュレーターが外れた状態で仰向け状態に浮いているのを発見。意識が無く心肺停止状態であ
ったことから、直ちに蘇生法が施行され病院に搬送されたが死亡が確認された。原因は心筋梗塞が疑われる
とのこと。

 中高年(40歳代)の女性、ダイビング浮上後の水面移動中に起こった事例である。

 浮上後に自身でBCDジャケットのエアを入れ、その後の水面移動中に何らかの身体的異常が出現し、心肺停止状態
に陥った。発症時の海況についての情報がないため、溺水との鑑別は困難であるが、浮上後比較的すぐに心肺停止
が起こっていることを考えると、浮上速度が速かった場合エアエンボリズムも鑑別に挙がる。

 それ以外ではやはりダイビング後疲労状態であり、なおかつ移動中であったことを考えると虚血性心疾患を疑うべき
であろう。

 その他潜水後の特発性肺水腫も鑑別すべきである。

 病院で心筋梗塞が疑われるとされており、溺水や心不全、肺水腫の所見は見られなかったのかもしれない。


4)60歳以上男性

 波打ち際から2メートルの海岸に意識がほとんどない状態で岩にもたれかかっているところを発見され、救急
車により病院に搬送されたが、死亡が確認された。
 潜水器具を使用して海草を採捕、体の不調を起こしたものと思われた。

 中高年(60歳以上)男性、同日のダイビング計画の詳細や時間経過が全く不明な状態で発見された事例。

 岩にもたれかかっていた状態で発見されており、ダイビング中もしくはダイビング終了後に体調の不良を自覚し、潜
水場所から海岸沿いまで自力で戻ったのだろうか。最終的には心不全と病名が付いている。

 高血圧などがあり動脈硬化性病変を持病に持っていた可能性もあり虚血性心疾患や心不全、脳血管障害など致命
的な疾患が発症したとも考えられる。身体の不調を自覚した時、それを訴えられるバディの存在により速やかな対応が
可能となり、より安全性が高くなるため、バディ潜水は必須であろう。

 
このように各事例を見ると、共通するのは体調不良や心停止が出現した時間が、いずれも身体的負荷がかかった後
の出来事である。

  1)の場合、講習中の海面移動中
  2)では連続した4回目のダイビング中
  3)海草を採捕の作業後の出来事である。

 エアエンボリズムや、近年言われているダイビング後原因不明の肺水腫や減圧障害を別にすると、潜水前後の水面
での事故では虚血性心疾患の可能性が高い事例が多く含まれると考えられる。



最後に

 ダイビング中に突然出現して心停止の原因になるような動脈硬化性の病気は、日常で身体的負荷をかける運動負
荷(トレーニング)により、また人間ドックや健康診断などにより、ダイビング開始前に危険性を予測して安全管理を行う
ことができた事例もあると思われる。

 エイジングに伴い動脈硬化性疾患の危険性が高くなること、30歳代でも日常生活における管理がなされていない場
合には動脈硬化症の危険性が潜むことを再認識し、積極的に健康管理を行うことを奨励したい。





参考文献

1)Kindermann W et al.:Kritisches aus internistischer Sicht.Monatsk arztl Fortb 1980;30:666-75

2)Paffenbarger Jr RS,Hyde RT et al.:Pyhsical activity ,all cause mortality and longevity of college alumni.N Engl J 
Med 1986,314:605-13

3)山見信夫ら:日本高気圧環境医学会雑誌、2003、38(2)、80−85、スクーバダイビングを始める際に受けるメディカ
ルチェックの問題点とRSTC医学声明書について

4)高血圧治療ガイドライン2004年版:日本高血圧学会

5)Rost R.Herz und Sport. Erlangen:Perimed,1984

6)Fagard R et al.:Kardiologie im sport.Koln:Deutscher Arzte-Verlag.1987:42-52

7)Juhlin-Dannfeit A et al:Central and Peripheral circulation in relation to muscle-fibre composition in normo-and 
hypertensive man. Clin Sci 1979;56:335-40






11th 2010  総合目次  Top Page