Medical Information Network for Divers Education and Research



論文 7




 ダイビングの安全管理と健康管理


                                 吉村 成子   日本医科大学第 1 外科

                                            成美会 吉村せいこクリニック




ダイビングの安全管理



  インストラクター及びガイド
   現地のショップ及びその組合
   各指導団体
   自分

  トラブル時

    海上自衛隊
   海上保安庁
   現地の警察・消防署
   漁業組合  等

ラ イ セ ン ス



  ・ Cカードを保有しないケースの事故が未だに多い。

  ・ ライセンスを保有しない人がダイビングできるのは、インストラクタ−との
  体験ダイビング又は講習のみである。

   タンクを貸すショップでのチェックの強化
   貸したタンクは本人のみ使用等の一言
   周囲のインストラクター達のチェック
   講習時に友人にタンクを貸したり、プロではないのに人にダイビングを
    教えたりする事を禁止する旨を加える。 

ライセンス記載事項の遵守



※各団体により条件記載のライセンスがある。


          ・例 ・PADI スクーバダイバー:
                  12m以浅、プロ同伴が義務
            ・PADI OW:
                  18m以浅が義務

         *他にも上級者との同伴を義務とするカードもある。

         現地ショップのインストラクター等によるカードの確認
         世界共通にルール遵守を徹底

単独ダイブの禁止



★ダイビングは必ずバデイと二人以上でするものである。
  
  ・ 単独ダイブでは、不慮の事態が起きた場合、致死的になり得るし、事故判
   明までの時間もかかる。
  ・ このルールは特別な作業ダイバーを除き、プロダイバー、プロカメラマン 
   等も同じである。
  ・ ダイビング前のバディチェックは必ず行う。

  現地ショップでのバデイの確認、組み合わせの徹底
  単独ダイバーと思われるダイバーを発見した場合の適切な指示
  単独ダイバーへのタンク貸し出しの禁止

講習やビギナー等不安のあるダイバー


 ・ 講習中のダイバーは未だ本来のダイバーではない。
 ・ 最近指摘が多いが、インストラクターの質の低下は、当然教えられたダイバ
  ーの能力の低下を意味する。

  講習中のインストラクターはバディ・チェック(特にタンクバルブのオープン
   の確認等)から講習終了まで、決してダイバーから目を離さない。(透明度
   の悪い日本では、人数によりアシスタントを増やす)

  ライセンス取得後間もないダイバーは、本来一人前であるべきだが、上記
  の如く器材のセッティングもままならないケースも多い。
  
  ⇒ 重要ポイントは必ず現地のインストラクターやガイドがチェックする。
    早く自立したダイバーになる様に自信がつくまで教育する。

海 況 の 判 断



  ・ 自己のダイビング経験等を考えて、その日の海況が許容できるかを十分
  判断する。

  ・ この判断が困難なビギナー等は現地のショップに判断を依頼したり、ガイド
  を頼むべきである。

   決して自己過信してはならない。 

自  信



  ・ 過剰な自信は事故の原因である。

  ・ 以前よりダイビングをしていたケースが自己の体力を過信して事故に到る
  ケースも多い。

  ・ 加齢と共に健康や体力が落ちている事を十分認識すべきである。

 ! 少しでも不安を感じたらプロダイバーのガイド等を依頼すべきである。



体  力



  ・ 加齢や忙しい日々の仕事で、次第に低下する体力を保持するためにも日
  頃の運動を続ける事が望まれる。

  ・ 前のダイビングから6ヶ月以上経過した場合は、インストラクタ−等とのリフ
 レッシュコースを受けるべきである。

  ・ 体力は1日ずつ低下していくものと認識し過信してはならない。

   少しでも不安があったら現地や所属するショップのプロダイバーを依頼す
   る。

プ ロ の 判 断



     毎日ガイド等をしているプロダイバーは海況の判断、客のレベルの判断
    等に 優れている。従って彼らの意見をないがしろにしてはならない。

    チェックダイブ等での判断には従うべきである。

    短い休暇といって無理、無謀を現地ショップへ頼んではならない。
     (夜の飛行機に乗る場合、午前中のダイビングを自分達の責任だから
     等と言って頼む例が未だに存在する等…)

無 理 ・ 無 謀

 ・ レクリエーションダイバーは無限圧潜水

   (減圧潜水は、特別な職業ダイバーが行なう物であり潜水士の免許を有
    し、特別な減圧規準に従う)

  ・ レクリエーションダイバーの最大深度は40m

  ・ 深いダイビングを短い水面休息で行うべきではない

  ・ 複数本のダイビングを計画する場合最も深いダイビングを先に行なう

  ・ 疲労等体調に不安を感じたらその時点でダイビングを中止する

   講習でレベルにあった深度を再度強調する
   現地ショップで潜水計画をチェックする

ダイブコンピューター



★コンピューターはあくまで補助である。(過信禁物!!)

 ・ コンピューターには、個人のデータ(年齢.体調.疾病等)は入っていない。
 ・ コンピューターには各種のタイプがあるが絶対信用できるものはない。
 ・ つけ忘れ、スイッチの入れ忘れダイブ、ノコギリダイブ、ダイビング中の
    浮上等があるとコンピューターのデータは全く信頼できないものとなる。
 ・ コンピューターの内容を熟知せず使用すべきではない。

   あくまでも潜水計画は、ダイブプラナーで立てるべきである。
   現地のガイド等と先に潜水計画は相談する。(現地ガイドはプロであるか
    ら客のレベルにあった計画を先に立てることが必要である)
   コンピューターを使用してもログブックに圧力記号等は必ずつける。

ダイビングスタイル



 ・ 最近、水中カメラやビデオの飛躍的発展により 同深度に長くダイビング
   する傾向がある。

 ・ 上記は、減圧症のリスクを上げると共に夢中になる余りにエアー切れ等
   を起こす場合すらある。

 ・ ナイトロックスの使用:規準及び危険性を熟知し本当に必要な時にのみ
   使用すべきである。

   目的があってもその場にいる時間等は先に潜水計画で安全性を確認し
    ておくことが大切である。
   同伴者は、夢中になっているバディに常に注意すべきである。
   プロスタッフが必ず、最初に潜水計画をチェックする。

水 面 休 息



  ・ 水面休息は、体内に貯留した窒素を放出する時間であるから極力安静に
   すべきである。

  ・ 水面休息中に激しい運動等をすれば血管は収縮し窒素の排出は遅れる。

  ・ 水面休息は上記の理由により寒い等は避けあくまでリラックスして休むべ
    きである。
  
   現地ショップは水面休息を楽にとれるように配慮すべきである。
   一緒にダイビングしたガイド以外のスタッフが必要なら次のタンク等を
    運んだりしてガイドも十分水面休息をとらねばならない。

ダイビング後の行動 



  ・ 水面休息同様、ダイビング後に窒素はしだいに放出されるものであるか
   ら熱い温泉、慌ただしい帰り支度等はさけるべきである。

   ダイビング計画時から余裕のあるプランを立てる。

   ダイビング後はプロスタッフと共にログブックをつけたりして慌ただしく
    帰り支度に走り廻ったりしない様にする。

  ダイビングは、あくまで紳士淑女のレクリエーションであるから常に気持ち
    にゆとりを持って行動すべきである。 

ダイビング後の帰り


  ・ 飛行機搭乗時間は、極力余裕を持ち基準は必ず厳守する。

  ・ 高所移動は極力さける。(300m)

  ・ 眠いなか車の運転をするからといって、カフェインを多量に含むドリンク剤
  は決して飲んではならない。

   例えば車では高所移動しなくてはならないポイントの場合船や電車での帰
   宅を考慮する。

   いかに基準内であっても、減圧症のかかり易さには個人差があるので飛
   行機搭乗までは、極力時間をあけるべきである。

   プロスタッフは、帰りの方法、時間等を管理しなければならない。

ト ラ ブ ル 時



  ・ 不測の事態が起こっても常に冷静な判断が大切である。

  ・ プロスタッフは、いかにバディチェックをしていても特に講習やビギナーのツ
  アーでは、タンクバルブのオープン等、致命的になる様なものは必ず再チェ
  ックすべきである。

  ・ 冷静な考慮後、救助が必要な事態もあり得るので、救助を求めるサイン等
  は常に復習しておく。

   現地では、陸やボード上にアシストするスタッフがいる事が望ましい。

   緊急時になされるリコールのサイン等は最初にスタッフ又はボートクルー
   が説明しておくべきである。

サ イ ン



  ・ ダイビングポイントでは、船等との接触事故をさけるため必ずダイブフラッ
  グを用いる。

  ・ バディを見失ったときの1分間ルール等は、必ず最初に復習しておく。

   プロスタッフや上級者は、不測の事態の対処法を常にシュミレーションし
   慌てず的確に対応できる様に訓練しておくべきである(緊急アシストプラ
   ン)

自 分



  ・ あくまでもダイビングは自己管理のレクリエーションである。

  ・ 体調、海況等を判断し最終決定するのは、自分である事を忘れてはなら
  ない。

  ・ 気候、水温、エントリー法(ボートかビーチか等)等も考慮しダイビングする
  かは自分が決める。

   講習生やビギナーで上記の判断が困難な場合はプロスタッフがアド
    バイスをするが決定は本人がすべきである。

ダイビングの健康管理



  ・ ダイビングを始めるときのみならず、ダイバーは1年に1回、もしくは体調
  に変化を感じたらダイビング専門医のもとで健康診断を受けるべきである。

  ・ 特にプロスタッフは自身の体調がお客様に大きな影響を与えるため、潜水
  士同様6ヵ月毎に本来ならば、健康診断すべきである。

  ・ 健診項目として最低胸部X−P、心電図、血圧、検尿、呼吸機能、聴力検
  査、血液検査(血算,肝機能,腎機能,コレステロール,中性脂肪)が含ま
  れるべきである。

(なお、本来であれば1年に一回は人間ドックを受けること をすすめる。)






★ 今回このRSTCの各項目に簡略な追加事項を加えることで、
一般の医師が判断できるようにしたいと考え試みた。


1) 現在妊娠中ですか。または妊娠のご予定がありますか。

   現在では、生理が遅れて約一週間で簡単に妊娠の有無 がチェックでき
   る。

  ・ 妊娠が不明の時点でのダイビングは問題がない。

  ・ 妊娠判明から胎盤ができるまでは、激しい運動で流産の危険があるため
    禁止

  ・ 胎盤ができてからは、胎盤の密な血管に窒素の気泡が入り込み異常をき
    たす可能性があるので禁止

  ・ 妊娠を強く希望し、予定のある方は中止することをすすめる。


2) 日常、習慣的に投薬、又は市販された薬品を服用していますか。

  (避妊薬を除く)

  ・ 許可:ビタミン剤、眠けのない酔い止め、眠けのない抗アレルギー剤及び 
   抗ヒスタミン剤、下剤、下痢止め、消化剤

  ・ 条件で可:安定した状態での胃炎、胃・十二指腸潰瘍に対する薬剤安定し
  た血圧のたの降圧剤 
   (但し、減圧症のリスクは高くなるので控え目なダイビングをする様に話す)

   その人に問題のない鎮痛剤(生理痛に対して程度)

   夜、興奮して眠れない人に対し常時ではなく必要時にのみ処方する軽い
   入眠剤

   症状もなく安定している人の高脂血症に対する薬

   症状もなく安定している人の高尿酸血症(痛風)に対する薬
   コントロール良好な糖尿病に対する経口剤(但し食事抜き等で低血糖を
   起こさない様指示)

  ・ 不可:冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の薬

   抗不整脈剤,喘息の経口剤及び発作止め吸入剤,抗精神病剤
   (軽くても眠けがあるものは不可)
   風邪薬,脳疾患や心臓疾患治療後の抗凝固剤インシュリン製剤


3) 45歳以上の方で以下の一つ以上の項目があてはまりますか?

  ★ 年齢:加齢により動脈硬化が進み、いつの間にか血圧が上昇していた
    りする。又、仕事上も最も忙しい年代で睡眠不足等も多いと考えられる。
     現実に加齢により減圧症のリスクも上昇する。⇒定期的な健診、体調不
    良でのダイビングの禁止、控えめ なダイビングを指示する。

  ・ 現在、パイプ、葉巻、タバコを喫煙している。

   なるべくやめる様話す。一酸化炭素はHbと親和性が高いので、どうしても
   の場合は、ダイビング後に喫煙する様に話す。口の中、胸部X-P,呼吸機
   能正常ならば上記を話して可

  ・ コレステロール値レベルが高い。

   コレステロールが高い場合、動脈硬化が進み突然死の可能性がある。
   コレステロール下降の食生活の指示、家族性で下降悪ければ投薬して安
   定すれば可

  ・ 家族に心臓発作や脳卒中の病歴がある。

   家系的に血管系のトラブルが多い家系もあるので、コレステロール等の検
   査、心電図可能であれば脳ドックをすすめる。動脈硬化を進めない食事の
   指導、コレステロール値の上昇のみならば上記と同じ。心電図や脳の検査
   で異常あれば治るものなら治してから考慮 一般的には禁止


4) 喘息、あるいは呼吸時の喘鳴又は運動時に喘鳴がする事がある。

   患者の言う事を安易に信じてはいけない。(病院に行った時や発作止めの 
  吸入剤を使った時のみを発作と考えている場合等)

 ・ ピークフローの測定が最も有用

  (但し日内変動があるので貸し出して数日間の経過をみるべきである。)

 ・ 運動時のピークフロー測定も重要である。

 呼吸機能検査が正常かつ気管支拡張吸入剤にて可逆性がない。
 運動誘発テスト陰性
 ピークフローが良好にコントロールされている  場合のみ可

  5) 花粉症、又はアレルギー症状の激しい発作、あるいは頻繁に発作
にかかる。

 ・ ピーク時は禁止

 ・ 眠けのない抗ヒスタミン剤で圧平衡できれば可

  (アレルゲンの判明している場合は抗アレルギー剤で加療を続ける事が
    望ましい)


6) カゼ、副鼻腔炎、又は気管支炎によくかかる。

 ・ 頻度が通常人なみであれば体調の良い時は可。
 ・ カゼ等に罹患しているときは、耳やサイナスの圧平衡ができないばかり
  か、気道も過敏になっているので痰等が肺の末梢に詰まれば肺のスクイズ
  から過膨張障害の危険があるので絶対禁止。

 !カゼを甘くみない。

 ・ 頻繁に副鼻腔炎になる方は一度X−Pでサイナスの通路の確認をすべきで
  ある。


7) 何らかの肺の病気(肺炎など)にかかった事がある。

 ・ 完治していれば特に問題はない。

 !治ったばかりの場合は、肺胞等が強化するまで1〜2ヶ月はダイビン
  グは控える事が望ましい。

 
8) 気胸になったことがある。

 ・ 安静やチューブ挿入のみで治ったケースは禁止
 ・ 手術したとしても原因となったブラしか切除していない事が多い。

    5mm幅のCTでブラの有無を確認し、一つでもあれば禁止。

   !ブラは多くの場合、多発で両側性である。


9) 肺(胸部)の手術を受けた事がある。

 ・ 胸膜腫瘍等、肺に触れていない場合は可。
 ・ 肺の手術の場合はX−P等で弱い部分があるかを確認し呼吸機能検査で
  も異常のない事を確かめ問題なければ可。

    (場合によっては執刀医と連絡して確認する事が望ましい)


10) 閉所恐怖症、あるいは広場恐怖症に陥る事がある。

 ・ 日常で狭いトイレ等に行かれれば、まず問題はない。
 ・ こういうケースはパニックになり易いので、マンツーマンでの講習が望まし
   い。

 !精神病によるものでない事を、病院へ通っているか?薬を飲んでいる
  か?等で確認する。


11) 行動、品行上の精神的な問題がある(躁うつ)症など。

  ・ 現在、心療内科等に通院中で投薬中の場合は禁止
   (多くの薬は眠けがあり、判断力の低下をおこすし、前日のみやめたとして
   も逆にパニックに陥り易い)

 !担当の精神科の医師が治癒と判定し、投薬もなくなった時点で再考慮
  する。⇒多くは可となる

 !ストレス等によるうつ状態は治るが三大精神病に含まれるそううつ病
  は治らない。


12) てんかん、発作、けいれんをおこす。又は
それを抑えるための薬を服用している。

  ・ てんかんは三大精神病の一つであるから絶対禁忌。
  ・ 脳の術後などに予防的に投薬をされている場合、5年以上たっても発作が
  なく投薬の中止を告げられた方は、他の症状も含めて判断するが、多くは可
  (但し、始めはマンツーマンでの講習が望ましい。)


13) 偏頭痛をくり返し起こす、又はそれを抑えるための薬を
服用している。

  ・ 偏頭痛の多くは遺伝素因があり、頭痛前に目がチカチカする等の予兆が
  ある場合が多い。

 !投薬の方は禁止、ごく稀で投薬もない場合は体調の良い日のみ可


14) 意識喪失や、気絶した事がある
(完全又は一時的に意識を失った。)

  ・ 若い女性で起立性低血圧が原因の場合は体調を整えれば可。
   (但し、浮上後は涼しい所で休ませる。)

  ・ 脳疾患、てんかん等が原因の場合、現状でも医師のもとに通院中の場合
  は不可
 
 ・ 事故等で一時的に意識を失った場合は、その後通院もなく投薬もなく発作も
  なければ可。
  

15) 乗物酔いで困る事がよくある
(船酔やクルマ酔いなど...)

  ・ 当初は眠けの少ない酔い止めを服用して抑まれば可。
 
  ・ 次第に慣れる様に教育する。


 16) ダイビング事故や減圧症になったことがある。

  ・程度によるが、いずれも医師の許可があれば可

 !潜在的な恐怖心を有する事があるので、始めはマンツーマンでのリフ
  レッシュが望ましい。


17) 腰痛をくり返し起こす。

 ・ 一般的な腰痛は背筋及び腹筋の弱さが原因である。

 !水泳(クロール又は背泳)等でこれらの筋肉をきたえる事は有効でありダイ
  ビングのキックはさらに効果がある。当初重い器材を背負う時などに補助す
  ればむしろ治療にもなり得る。

  (椎間板ヘルニア等の病的なものであっても、日常生活を許可されていれば
  同様である)

 ・ 但し、シニア層の増加により、脊椎の圧迫骨折をおこしている、又はおこし
  得る様な骨粗鬆症例では食事指導や投薬を受けているので、さらに悪化し
  ない様しばらくの間は陸で負荷をかけない様にすべきである。


18) 腰部の手術を受けたことがある。

 ・ 術後運動制限のないケースは可

 ・ 術後多少の後遺症が残っていても運動制限ないケースは可

 ・ 事故等で大きな手術を受け障害の残る例では主治医と相談する事が望ま
   しい。



19) 糖尿病に罹ったことがある。

 ・ 一般的に日本人に多いカロリー制限及び運動指導のみで加療中のケース
  は可

 ・ 経口剤を飲んでいる場合は、低血糖にならない様に、食事に十分気をつけ
  れば可

   (すでに合併症出現例では、注意点を医師に確認する。)

 ・ インスリンを自己注射している場合は不可


20) 腰、腕、脚の外科手術、外傷や骨折後のあとの後遺症がある。

 ・ 運動可能であれば、後遺症を考慮して講習すれば可

 !術後や外傷後の場合、血流の変化でその末梢に減圧症がおこり
  易いので、控えめなダイブを指示する。


21) 中等度の運動ができない。

(例えば約1.6キロの距離を12分以内で歩くことができない。)

 ・ 原因に疾患がある場合は医師に確認する。

 ・ 単に虚弱な場合は、時間をかけて無理のない様指導すれば可


22) 高血圧症、又は血圧降下剤など、血圧をコントロールする薬を
服用したことがある。

・ シニア層の増加により高血圧のケースは多い。なるべく食事や生活改善を 
 努力させ、弱めの投薬でコントロールできていれば、投薬しないで高血圧のま
 まよりはるかにリスクは少ない。

!降圧剤は血流を変えるので、減圧症のリスクが高まるため控え目な
 ダイブを指導する。

!すでに合併症のある症例では、悪化させない様に無理はさせない事


23) 心臓疾患に罹ったことがある。

 ・ 現在も治療中の場合は不可

 ・ 先天性の心疾患で治療後かなり年数があり、現在特に注意点のない場合
  は可

 ・ 先天性の心疾患で特に運動制限のないケースは可


24) 心臓発作になった経験がある。

 ・ 本来の意味での心筋梗塞罹患例は不可

 ・ 単なる心臓神経症でも発作と感じるケースもあり、この場合は医師の判断
  で可となる可能性も高い。

 ・ 不整脈の場合、ブロック、突発性頻拍、心房細動等で意識障害や発作を
  おこした例は原則的に不可であるが経動脈的Ablationで治癒した症例は
  可となる場合もある。

   (WPW症候群の方でダイビングを続けたいため来院、大学へ紹介して
     Ablationを行ない、ダイビング可となったケースもある。)


25) 狭心症、あるいは心臓外科手術、又は
動脈手術を受けたことがある。

 ・ 狭心症で治療中の場合は不可

 ・ 心臓外科手術の場合、上記の様な先天性疾患の場合は可となるケースが
  多い が冠動脈のバイパス手術などは不可


26) 耳、または副鼻腔の手術をうけたことがある。

 ・ いずれにしても完治して圧平衡可能ならば可

   (但し、片側の耳が人口鼓膜の場合ピンホールをあけると再生しないので、
  注意深く 潜降時に圧平衡の確認を行なう事)


27) 耳の病気、聴覚障害、平衡感覚障害になったことがある。

 ・ 幼い頃の中耳炎等は現在圧平衡できれば可

 ・ 聴覚障害者は本人に意志があり圧平衡できれば可

 ・ 平衡感覚障害は主にメニエル病と考えられるが、この場合は体調が良い
  時は可
   (他に原因のある平衡感覚障害は医師の診断によるが多くは不可)


28) 飛行機内、あるいは高地でのドライブの時、耳の気圧障害
(一時的な耳詰まりが治らない)になったことがある。

 ・ 圧平衡が困難なケースは殆どが風邪かアレルギー性鼻炎が原因なので
  風邪の時だけの場合は治れば可、鼻炎のある場合は眠けのない抗ヒスタミ
  ン剤で殆どのケースが圧平衡出来るようになるので、その事を確認後は可
 
  (以後も抗アレルギー剤で治療を続ける事が望ましい)


29) 出血やその他の血液障害を起こしたことがある。

   ・ 血友病等の場合、治療により出血傾向が消失していれば可

   ・ 心臓発作や脳血管の術後で抗凝固剤の服用を必要とするケースは不可

   ・ いずれにしても医師のもとで出血傾向のチェックをして正常であれば可



30) 各種のヘルニアに罹ったことがある。

   ・ ソケイヘルニアは手術で完治していれば可
    未治療の場合は、かん屯の危険があるので不可

   ・ 術後の腹壁ヘルニアは治療して塞がれば可
    未治療の場合は同様にかん屯の危険があるので不可

    (椎間板ヘルニアについては(17)(18)参照)


31) 潰瘍、または潰瘍の外科手術を受けたことがある。

   ・ ストレスの多い現代、潰瘍患者は多い。急性期でなければ
    むしろストレス発散で治療効果もある。(当院では、行なっている)

   ・ 手術後は(30)の腹壁瘢痕ヘルニアがなければ可
   ・ 難病の一つである潰瘍性大腸炎では安定期に保温を十分すれば可

    (冷える事が悪化因子のため)


32) 人工肛門の手術を受けたことがある。

  ・ 現在は腸管を腹壁に直接つないでいるので、排便のコントロールがつけば
  可
    (人工肛門用の密着性の高い袋状のものは浮上と共にふくらむので不可)

  ・ 以前、人工肛門作製時にポーチをおいていた時期がありこの場合は不可
    (現在は殆ど存在しない。)


 33) 麻薬、薬物依存症、あるいはアルコール依存症
に なったことがある。

  ・ 現時点ならば当然不可

  ・ 後遺症(肝障害等)を残さず完治していれば可
    こうした若者にダイビングを教える事で立ち直るケースも多いので、そうな
  った背景、程度等を把握し良き理解者となって指導して欲しい。
    (当院でもそうした若い女性を現在IDCを受講させている。)

   ⇒インストラクター自身が真に成熟している必要がある。

体  調




  ★ 上記の病歴診断書は書いた時点のものである。

     @ 風邪気味でないか?
     A 睡眠は十分か? 
     B ストレス状態にないか?
     C 耳抜きはうまくいくか?
     D 二日酔いでないか?
     E 食事はとったか?

    等、その日の体調は必ず出発前あるいはダイビング前に何気なくチェック
  すべきである。

女性に特有な問題


  ★  生 理

   ・ 生理中であっても、元気であれば可 (安全な鎮痛剤であれば飲んでも
可)

  ・ 生理前、生理中は精神的に変調がみられるケースが多いので、男性イン
    ストラクターでも、女性が生理について話せる様な人間性を望む。

    この時期の女性は不注意になり易いので、注意してみる必要がある。

  ★  産 後

   ・ 肉体的には正常分娩であれば、約1〜2ヶ月から可能

   ・ 子供さんの授乳、首のすわり等考えると6ヶ月以降が妥当と考える。

医 師 の 心 構 え


  いかなる病気であっても、ダイビング不可の場合長時間になろうと、
   泣かれようと本人が 納得するまで話しあきらめさせる事も必要である。




  
  ダイビングの安全管理と健康管理

                               吉村 成子





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