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論文 13




 スクーバダイビングを始める際に受けるメディカルチェックの問題点と
 RSTC医学声明書について


                             山見 信夫  東京医科歯科大学医学部付属病院高気圧治療部








 RSTC(Recreational Scuba Training Council)医学声明書を邦訳して使用している指導団体に所属しているダイビン
グショップに依頼して以下の調査を行なった。 5軒のショップに、それぞれ100名の質問紙票を調査してもらった。最近
のお客さんから新しい順に100名について、質問紙票で「はい」と答えた人の人数をカウントしてもらった(「はい」と回答
した人は医師を受診しなければいけないルールになっている)。全体で「はい」と答えた方の割合は、わずか0.8%であ
った。 これを質問数に換算すると19,500の質問に対して「はい」と回答した方は5項目(0.03%)であった。 

 しかし、我々が今回邦訳したメディカルチェック票原案(受講生への質問紙票39項目)のトライアルテストでは、1項目
でも「はい」と回答した方の人数は、45歳未満のグループで97.1%、45歳以上では100%、ダイバー志願者では93.3%、
インストラクター訓練中の方では91.1%と高率であった。少なくとも1項目に「はい」というチェックがついた方は、全体の
95.4%にも上った。 メディカルチェック票原案(39項目)のトライアルにおいて「はい」と回答した個数は、平均3.6個であ
った。 

 RSTC医学声明書では、「はい」とチェックがついた方は、すべて医師を受診しなければいけないというルールになって
いる(我が国のダイビング指導団体が邦訳して使用しているRSTC医学声明書も同様)。そのため、現状では、インスト
ラクターがそのことを受講生に記入前に念押ししたり、「「はい」と回答しそうな項目があったときは、とりあえず空欄にし
ておいてください」という旨を受講生に告げてから記入をしてもらい、記入が終わったところで、インストラクターと一緒に
「はい」と付けそうであった項目を回答するという手順をとっているケースもあると聞く。ダイバー自身も、「はい」と答え
た場合は、医師を受診しなければいけないという煩わしさがあるため、ついつい「いいえ」と回答してしまうことも多いよ
うである。

このような 問題点を踏まえたうえで、ダイバーのためのメディカルチェックガイドラインを作成した。



以下講演者(著者)承諾により 日本高気圧環境医学会関東地方会誌 2003 : vol. 2 : pp. 37-42 より抜粋







 1.メディカルチェックの施行方法

 メディカルチェックを、いつ、どこで、だれが担当するかについていくつかの方法が考えられる。ダイビングの初期講
習を受講する際に、インストラクターが行うのが今日最も一般的な方法である。全てのダイバーが医療施設を受診する
ことが望ましいと言う意見もあるが、現実には不可能に近い。ダイビングをする度にインストラクターまたはガイドが行う
のも理想的ではああるが ( 一部のショップや指導団体では行われている ) 、詳細なメディカルチェックは難しい。

ダイビングツアーを申し込む際に、旅行会社やダイビングショップに行ってほしいと言う意見もあるが、ツアー参加条件
にメディカルチェックを盛り込むのは難しいであろう。ただし、もし実行されればせっかく行ったツアー先でダイビングに
影響する疾患が見つかり、ダイビングができなかったなどということはなくなるかもしれない。現地のリゾートやダイビン
グスポットで、ガイドが行うことについての問題点は、現地ですぐにダイビングができず、医療施設を受信しなければな
らなくなる人がでてくること、または先にも述べたように、そのツアー中に全くダイビングができなくなる状況もありえるこ
とである。毎年 1 回行われる会社や学校の定期健康診断を利用するという方法もある。日本は健康診断が充実して
いるため、定期健康診断結果をメディカルチェックに反映させるのは有用かもしれない。さらに、 C カードを更新制にし
て、更新の度にショップで行うという方法がもっとも理想的かもしれない。疾患保有率は年齢とともに増加するため、

 1 回だけのメディカルチェックで将来の身体状況を予想できるものではない。将来は継続的にメディカルチェックを受
けることができるシステムにする必要があろう。


 2.メディカルチェックの形式

 疾患の見落としを少なくして精度を上げようとすれば、ダイビングに精通している医師が全てのダイバー ( 受講生 ) 
をチェックするのが望ましい。しかし、現実には不可能である。やはり現行のように質問紙形式 ( アンケート形式 : 
本人が質問を読み本人が記入 ) のものをダイビングショップで行い、そこで危険性の高い疾患を持っていると判断さ
れた方 ( 疑いのある方 ) だけが、医師の診察を受けるのが効率的であろう。口頭質問形式 ( 質問した人が回答を記
入 ) する方法もあるが、質問するインストラクターの言い回しなどによってダイバーの回答が変わってしまう可能性が
ある。その他、問診 ( 医療施設で質問に対して回答 ) を受ける方法や、診察と検査 ( 医師による判断 ) を受ける方
法もあるが、すべての湯構成を対称に行うことはできないであろう。


 3.メディカルチェックの評価

 評価を誰がするかについてもいろいろな意見がある。インストラクターまたはガイドは、ある程度の判断はできるかも
しれないが、医学的な内容が濃くなってくると難しい。各科の専門医であっても、たとえ専門分野の疾病を診るときでさ
え、潜水医学の知識がなければ判断を誤ってしまうであろう。 DDNet ( Divers Doctors Network ) ドクターであれば、
ほとんどの医師が、ダイビングをしているため、ダイバーの状況を理解しやすいかもしれない。しかし DDNet ドクター

は 231 名 ( 2002.9.10.現在 ) しかおらず、全国のダイバーをフォローアップするには人数が少なすぎる。また、ス
ポーツドクターについては、現在 3 種類の認定制度がある。日本体育協会の認定医が 4,057 名 ( 2002.10.1.現
在 ) 、日本整形外科学会の認定医が 4,255 名 ( 2002.10.31.現在 ) 、日本医師会の認定医が 16,031 名

( 2002.9.24.現在 ) である。しかし、いずれの認定医にも取得条件として潜水医学の知識を必要としない。よって、
スポーツドクターは、運動に関することについては対応できても、高圧生理について助言することは難しいであろう。


 4.職業ダイバーのメディカルチェック

 我が国のコマーシャル ( 職業 ) ダイバーのメディカルチェックには、高気圧作業安全衛生規則 ( 厚生労働省 ) が
適応される。この規則には、検査の内容、評価、就業禁止疾病が記載されており、医師はこの基準に従って評価する
ことになる ( 第 38 条 : 健康診断、第 39 条 : 健康診断の結果、第 39 条の 2 : 健康診断の結果についての医師
からの意見聴取、第 40 条 : 健康診断結果報告、第 41 条 : 病者の就業禁止 )。しかし、レジャーダイバーには、こ
の規則が適応されないため、法的には、身体状況の如何に関わらず、本人の意思でダイビングをすればよいことにな
る。


 5.各指導団体が使用しているメディカルチェック質問紙

 現在、各指導団体が使用しているメディカルチェック質問紙について調べてみると、内容、項目数ともまちまちであ
る。項目数は、最も少ない団体で 16 項目、最も多い団体で 53 項目である。項目数で質問紙の良し悪しを評価する
ことはできないが、一般には質問することが必要と考えられている項目が欠落していたり、何の疾患をルールアウトす
るための質問なのかがはっきりしないものもある。


 6.レジャーダイバーのメディカルチェックを行なうにあたって考えられる留意点

 どのような質問紙を用いても、危険な病気を全てルールアウトすることはできない。しかし、頻度の高い危険な病気に
ついては、効率的にスクリーニングできるよう考慮されるべきである。質問紙は、文言の言い回しで、回答に大きな差
異が生じる。スクリーニングを多く掛けようとするか、少なくかけようとするかで表現の仕方も大きく変わってくる。質問
紙を渡すインストラクター ( 受講生 ) にどのように説明するかによって回答の仕方も大きく変わってくる。

 現在、各指導団体が作成している質問紙の多くは 「 はい 」 または 「 いいえ 」 で回答する形式のものである。 「 は
い 」 にチェックが付くと、医師を受信して診断書を書いてもらわなければならないものが多く、受講生が回答する際に、
インストラクターが誘導的な説明を付け加える場合がある。受講生は、インストラクターからのコメントによって回答が大
きく左右され、正確な身体状況を知りえないことが懸念される。また、医師の判断が、ダイバーの権利を奪わないかと
いう問題もある。基本的に、医師にダイバーがダイビングをするという行為を制限する権利はない。医師の意見は、ア
ドバイス的なものであり、「 許可 」 または 「 禁止 」 という意味合いはないと考える。さらに、医師によって、危険性が高
いと判断された受講生をショップ ( インストラクター ) が受け入れることができるかという問題もある。これはインストラ
クターとダイバーとの契約や信頼関係、訴訟の問題に発展する。


 7.我が国のダイビング指導団体が翻訳して使用している RSTC ( Recreational Scuba Training Council )
   医学声明書の調査

 RSTC 医学声明書 ( 質問紙票 ) を邦訳して使用している指導団体に所属しているダイビングショップに依頼して、
以下の調査を行なった。

 5 件のショップに、それぞれ 100 名の質問紙を調査してもらった。最近のお客さんから順に 100 名について質問
紙で 「 はい 」 と答えた人の人数をカウントしてもらった。全体では 「 はい 」 と答えた方の割合は、わずか 0.8%であ
った。これを質問数に換算すると 19,500 の質問に対して、 「 はい 」 と回答した方は、 5 項目 ( 0.03% ) であっ
た。しかし、今回邦訳して作成したメディカルチェック票原案 ( 39 項目) のトライアルテストでは、 1 項目でも 「 は
い 」 と回答した方の人数は、 45 歳未満のグループで 97.1% 、45 歳以上では 100 %、ダイバー志願者では、 
93.3%、インストラクター訓練中の方では 91.1% と高率であった。少なくとも 1 項目に 「 はい 」 とチェックが付い
た方は、全体の 95.4% にも上った。

 また、メディカルチェック票原案 ( 39 項目 ) のトライアルで、 「 はい 」 と回答した個数は、平均 3.6 個であった。


 8.我が国のダイビング指導団体が使用している RSTC ( Recreational Scuba Training Council )
   医学声明書のの問題点

 RSTC 医学声明書では、 「 はい 」 とチェックが付いた方は、すべて医師を受診しなければいけないというルールに
なっている ( 我が国のダイビング指導団体が邦訳して使用しているRSTC 医学声明書も同様 )。そのため、現状で
は、インストラクターがそのことを記入前に念押ししたり、 「 はい 」 と回答しそうな項目があった時は、 「 とりあえず空
欄にしておいてください 」 という旨を受講生に告げてから記入してもらい、記入が終わったところで、インストラクターと
一緒に 「 はい 」 と付けそうであった項目について話し合い、その上で回答するという手順をとっているケースも少なく
ないと聞く。ダイバー自身も、 「 はい 」 と答えた場合には、医師を受診しなければいけないという煩わしさがあるため、
ついつい 「 いいえ 」 と回答してしまうことも多いようである。


 9.日本語版 RSTC メディカルチェック票作成にあたって ( 質問の文言についての配慮 )

 文言の使い方によっても回答率は大幅に異なる。インストラクターになるための訓練中のダイバーに対して行なったト
ライアルにおいて、 「 はい 」 と回答した人数が 30% を上回った項目について、文言の使い方を変えて調査してみ
た。 「 アレルギー性鼻炎の症状がよく起こりますか? 」 の質問に対しては 32.4% ( 36/111 名 ) は 「 はい 」 と
回答したのに対して、 「 アレルギー性の鼻炎がひどいですか? 」 の質問には、 10.8% ( 12/111 名 ) の方し
か 「 はい 」 と回答しなかった。また、 「 乗り物酔いをしやすいですか? 」 という質問に対しては、 45.9% ( 51/
111 名 ) が 「 はい 」 と回答したのに対して、 「 ひどい乗り物酔いをよくしますか? 」 の質問では、 6.3% ( 7/
111 名 ) と減少した。また、 「 耳の病気、聴覚の異常、平衡感覚の異常を経験したことがありますか? または、耳
の手術をしたことがありますか? 」 の質問では 40.5% ( 15/111 名 ) が 「 はい 」 と回答したのに対して、 「 耳
の病気、聴覚の異常、平衡感覚の異常がありますか? または、耳の手術をしたことがありますか? 」 の質問に対し
ては、 5.4% ( 6/111 名 ) の方だけが 「 はい 」 と回答した。


10.メディカルチェックガイドライン作成上の問題点と留意点

 以上のことを踏まえると、英語版 RSTC 医学声明書をそのまま邦訳して使用すれば、現状とあまり変わらない状況
になるであろう。これまで通り危険な疾患のほとんどがピックアップされず、結局、ダイバーは持っている病気が原因で
事故や傷害を招き、インストラクターやガイドも訴訟に巻き込まれる。我々医者も、弁護士などから参考意見を求めら
れる。講習生自身の病院受診を避けようとする回答姿勢、さらにはインストラクターの誘導的な回答のさせ方によるア
ドバイスを少なくしなければ、メディカルチェックはこれまで通り単なるセレモニーになってしまう。講習生が病院を受診
したくないために偽った回答をしないためには、 「 はい 」 と回答しても、必ずしも医師を受診する必要のないシステム
にしなければいけない。よって、今回作成するメディカルチェックガイドラインでは、インストラクターマニュアルを作成す
るよう作業を進めた。講習生が 「 はい 」 と回答した場合でも、ある程度のことは、医師を受診せずにインストラクター
に解決してもらうわけである。

 その他、原案作成上、配慮された箇所としては、英語版で RSTC 医学声明書では、妊娠についての質問項目が最
初に設定されているが、そのような配列は、日本ではあまり一般的ではないため、配列を変えた。また、項目順序が、
臓器別にも疾患別にも配列されていないため、ドクター用のガイドラインに従って、ダイバー用も配列を変えた。さらに、
我が国では、会社や学校で行なわれている一般健康診断が充実しているため、その結果も考慮した内容とした。肥満
については、米国とと我が国とでは考え方に差があり基準値も違うため、日本独自のものとした。また、ダイビングをす
るにあたっての心配事についても尋ねるものとした。


11.メディカルチェックガイドライン作成のスケジュール

 作成にあたっては、まず、 2001 年 7 月に医師、ダイビング指導団体、その他関係団体の方々から意見を聞い
た。その後、 RSTC 医学声明書を邦訳し原案を作成した。原案作成については、先に示したトライアルテストの内容も
考慮した。 2002 年 5 月に各専門分野の医師グループを構成し、原案を詳細に検討修正した。その後、 2002 年 
11 月の第 37 回日本高気圧環境医学会の特別シンポジウムで討議された。その際のご意見も広く取り入れ、再び修
正を加え、 2003 年 1 月に再度、各専門医に加えて日本高気圧環境医学会の潜水医学に関わる 10 数名の医師
の方々にも修正案を検討していただいた。


12.メディカルチェックガイドラインの紹介 ( インストラクターマニュアルを一部抜粋 )

 ( 質問文の前についている番号は、実際のガイドラインで使用している番号。セミナーで説明した項目について、いく
つか参考としてあげる。) 




 1.偏頭痛 ( 脈を打つような頭痛 ) をよく起こしますか?または、そのため予防薬を飲むことがありますか?


    偏頭痛をよく起こす :     月に 2 回以上偏頭痛を起こす方は医師に相談する必要があります。

    偏頭痛 :              偏頭痛を起こしている時は、頭や脳の血管が収縮していたり拡張していたりしま
                       す(通常、痛みがあるときは拡張している)。血管の収縮や拡張は、窒素の排泄
                       や吸収に影響します(減圧症にかかる可能性が高くなるかもしれない)。偏頭痛
                       はダイビングにより誘発されることがあります。また、頭痛があるときには、注意
                       力が低下します。頭痛時、あるいは前兆時(頭痛が起こる前のまえぶれ。目の
                       前がちらつくとか、頭が重い、視野が狭くなるなどの症状がある)はダイビングは
                       やめて起きましょう。偏頭痛を時々起こす方でも、頭痛がなく、体調がよければ
                       ダイビングをしてもよいでしょう。偏頭痛と自己判断している方の中には、実際
                       は、脳の病気ということもあります。偏頭痛という診断が明らか(医師による診
                       断)で、頭痛を起こした時に、頭痛以外の症状(視覚障害、運動麻痺、吐き気、
                       嘔吐など)がなければ、医師を受診する必要はありません。頭痛以外の症状を
                       伴う方は、医師に相談する必要があります。

   予防薬を飲むことがある :   予防薬には血管を収縮させるものがあります。血管の収縮は、窒素の吸収、排
                       泄に影響します。予防薬をを服用している時には、ダイビングはやめましょう。痛
                       み止めを内服しながらダイビングをしようと思っている方は、医師に相談する必
                       要があります。


 5.乗り物酔い(船酔い、波酔い、車酔いなど)をしやすいですか?


   乗り物酔い :           極端に酔う人の中には、めまいの病気(内耳の病気)を持っていることがありま
                       す。短時間で、または極端に乗り物酔いをしやすい方は、医師を受診する必要
                       があります。日頃から、車酔いにかかりやすい方は、ボートにも酔いやすく、波
                       酔いにもかかりやすい傾向があります。乗り物酔いにかかると、注意力が低下
                       し、適切な行動が取れなくなります。酔い止めを飲みながらのダイビングはすす
                       められません。多くの薬が眠気、だるさ、頭がぼーとするなどの副作用があるた
                       めです(窒素酔いの症状をひどくすることもある)。もし、酔い止めを服用しながら
                       ダイビングをするつもりであれば、医師に相談する必要があります。


 6.中程度の運動(たとえば12分以内に1.6kmを走る)ができませんか?


   中程度の運動 :          健康な大人の歩行速度は、通常 1 分間に 80m (10分間に約800m)程度で
                       す。この質問にある12分間に1.6kmというのは、駆け足程度の速さということ
                       になります。この項目に 「 はい 」 とチェックされた方は、通常のダイビングに必
                       要な運動能力を満たしていない可能性があります。身体の状態としては、高齢、
                       腕や脚などが不自由な身体障害者、心臓や肺の病気、または何らかの病気で
                       運動を制限されているなどが考えられます。この項目に 「 はい 」 とチェックされ
                       た方は、医師と相談した方がよいでしょう。
                       ただし、運動機能の障害(四肢の身体障害など)があるからといって、ダイビング
                       ができないわけではありません。身体に障害がある方は、通常のダイビング活
                       動(自力でポイントまで泳ぐこと、または潜降や浮上を自分で調整することなど)
                       ができないこともあるので、必要に応じて訓練を受けたサポートダイバー(単なる
                       バディーでなく、障害者の安全を全面的に管理してくれるダイバー)が一緒に付
                       き添うこと、その他安全にダイビングをするための器材等の工夫も必要です。


12.気胸(肺が破ける病気)を起こしたことがありますか?


   気胸 :                突然気胸の中で最も多いのは、自然気胸です。自然気胸は、私たちが生活す
                       る大気圧下で肺が破ける病気です。ダイビング中に起こる気胸で最も多いの
                       は、気圧変化が誘因となる気胸です。息を止めて浮上する場合に起こります。そ
                       のため、過去に自然気胸を起こしたダイバーは、ダイビング中の気胸も起こしや
                       すいことが考えられます。ブラ(破けやすい気腫の嚢胞)は多発していることが多
                       く、手術でブラを切除しても、十分そのリスクが減っているとは考えられません。
                       いかなる種類の気胸であっても、気胸を起こしたことがある方はダイビングは止
                       めておきましょう。手術でブラを切除した方も、ダイビングは止めておきましょう 
                       (医師を受診してもダイビングは危険と判断されます)。ブラを切除しても十分リ
                       スクを減少したとはいえないからです。気胸を起こしたことはないが、ブラがある
                       方は、医師に相談する必要があります。


18.最近、首、背中、腰、または四肢に痛みがありますか?


   首、背中、腰、     :      首、背中、腰、または四肢に痛みがあった方がすべてダイビングが危険という
   または四肢に痛み         わけではありません。しかし、ダイビングでは重い機材を背負い、陸上を移動す
                       ることがありますし、水中でもバランスをとるため、視野の狭さを補うなどの理由
                       で、日常では行なわない姿勢をとることがあります。そのため、身体に多くの負
                       担がかかります。過去および現在において、これらの部位が痛んだことのある
                       人は、再度、痛みが生じる可能性があります。ダイビング終了後に、これらの部
                       位に痛みが生じた場合には、減圧症も考えなくてはなりません。その際、元から
                       ある病気なのか、または減圧症なのかを鑑別する必要があり、これらを的確に
                       診断することは容易ではありません。よって、現在および過去に、痛みのある方
                       は現状把握と治療の面から医師に相談しておいた方がよいでしょう。



24.アレルギー性鼻炎 ( 花粉症を含む ) の症状を起こしたことがありますか?


   アレルギー性鼻炎 :       アレルギー性鼻炎の症状(鼻水と鼻づまり)があるときは、その重傷度に関係な
                       く耳抜きができにくいことがあります。鼻の粘膜が腫れているときは、耳管周囲
                       の粘膜も腫れていることがあるからです。耳抜きができにくいと、中耳腔のスクイ
                       ーズやリバースブロックを起こして、鼓膜や内耳窓(中耳と内耳の間にある薄い
                       膜)を傷つけることがあります。内耳窓が破れると、めまい、耳鳴り、難聴の後遺
                       症が一生続くことがあります。耳抜きができにくい時、鼻づまりや鼻汁がひどいと
                       きは、その日のダイビングはやめましょう。アレルギー性鼻炎の症状がひどい方
                       は、医師に相談する必要があります。


30.潜水障害 ( 耳、副鼻空、肺の気圧変化による外傷、および減圧症や動脈ガス塞栓症など )
   または、潜水事故を起こしたことがありますか?


    潜水障害、減圧障害、 :   潜水障害とは、ダイビングがきっかけで起こる障害の総称です。(スクイーズや
    潜水事故            鼓膜の損傷など、多数の障害がある)。減圧症とは、主に、減圧症や動脈ガス
                       塞栓症(空気塞栓症またはエアエンボリズム)のことをいいます。俗にいう潜水
                       病とは減圧障害のことです。また、潜水事故とは、ダイビング中に起こったトラブ
                       ルも含みます(潮流に流されたり、ボートのスクリューに接触したなど)。
                       この項目に 「 はい 」 とチェックされた方は、医師に相談する必要があります。


Y 45 歳以上の方のみの質問です。


 1.タバコをすっていますか?

   タバコをすう :           タバコを吸う方は、ダイビング中にトラブルを起こしやすいことが知られていま
                       す。タバコは、呼吸機能を低下させ、中耳腔や副鼻腔のスクイズを起こしやすく
                       し、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクも高くします。米国では、ダイビング中
                       の死亡事故の代表的な原因にもあげられています。この項目に 「 はい 」 とチェ
                       ックしても、医師を受診する必要はありませんが、タバコをすわない方よりダイビ
                       ング中の身体的なトラブルを起こすリスクが高いことを知っておく必要がありま
                       す。


 2.血中コレステロール値が高いですか?

   血中コレステロール値が高い : 血液中のコレステロール値が高いと動脈硬化が早く進行し、血管が詰まりや
                         すく、もろくなります。そのため、心筋梗塞や脳卒中などの病気を起こしやすく
                         なります。ダイビング中にそのような病気を起こすと死亡する可能性が高くな
                         ります。この項目に 「 はい 」 とチェックした方は、上述したような潜水トラブ
                         ルを起こすリスクが高いことを知っておく必要があります。





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