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論文 31




 潜水事故事例から見る身体適性と健康管理


                                 大岩 弘典    南あたみ第一病院 ダイバーズクリニック




大岩弘典1)毛利元彦2)吉村成子3)

1)南あたみ 第一病院ダイバーズクリニック (〒413-0102静岡県熱海市下多賀477)
2)日本海洋事業 (〒233-0004横須賀市小川町14−1 ニッセイ横須賀センタービル8F)
3)吉村成子(吉村せいこクリニック(〒105-0003東京都港区新橋2−20−15 新橋駅前ビル1号館2F)




Summary

Diving accident data collected by NPO Shizuoka Prefecture Divers Council from 2002 trough 2007 were queried to 
determine the factors of the physical fitness attributed to diving mishaps. Accident cases over the age of 40 yrs 
were mainly occupied in exhaustion following cardiovascular disease(CAD), hypertension, stamina fall by the aging 
and chronic obstructive pulmonary disease(COPD). In addition, recurrent pneumothrax and rupture of brain 
aneurysm were by a case respectively. Accident cases under the age of 40 yrs were occupied in the three major 
motives of panic, hyperventilation syndrome and rapid ascent. These cases occurred to arterial gas embolism (AGE) 
and drowning developed it continuously and, caused water inspired pneumonia and lung edema each later. From the 
view of physical fitness to dive, medical problems of diving risk related disease such as stamina fall with aging, CAD, 
hypertension and spontaneous peumothrax have been discussed in this paper. Elder divers over the age of 40 yrs, 
especially those with risk factors regarding lifestyle related diseases should consider obtaining a through physical 
examination and take evaluation to begin or continue diving. 



キーワード : 潜水事故 潜水身体適性 中高年ダイバー 心血管系疾患 高血圧 自然気胸









1.背景

 平成14年1月から19年10月までの間、静岡県警資料による潜水事故件数は65件、うち死亡事故は24件
(男性13:女性6件、不明5件)、傷害事故は41件 (男性20:女性18、不明3件)、但し、不明は平成14年分。傷害事
故は警察に届けなかったケースも多々あると考えられる。また、届出データーの原因欄に記載されている「技量未熟」
について本当にそうだろうか?

 事故を減らすには背景を「綿密に調べる」必要がある。事前にダイバーの健康や精神身体的問題を見過ごしていた
可能性はないのか?



2.目的

 NPO法人・静岡県ダイバーズ協議会(SPDC)が保有している事故記録簿は「綿密な調べ」を引き出せる可能性を秘
めている。事故記録簿から抽出された事故ダイバーが抱えていた身体的要因を分析し、潜水身体適性に係わる医学
的問題点について研究する。



3.方法
 NPO法人に収録された事故記録34ケース中、死亡11人、傷害23人について40才以上15人、40才以下19人は
ダイビング時の精神・身体的要因について医師の立場から精査をおこなった。事故記録から、〔表1〕40才以上、及び
〔表2〕40才以下に分け、事故の誘因、 背景 、 結果(事故後の容態)を検討した。

また、上記の結果を踏まえ最近の知見から、わが国のレジャーダイバーに係わる潜水身体適性の医学的問題点、中
高年ダイバーの心血管系疾患など生活習慣病のほか、気胸などについて検討を加えた。



4.結果

 40才以上の中高年ダイバーでは、背景に持病〔冠動脈硬化性疾患(以下、CAD)、高血圧、肥満や加齢による持久
力低下、COPD (以下、閉塞性換気障害)に事故の誘因となった疲弊がある。また、肺嚢腫(以下、ブラ)による気胸、脳
動脈瘤の破綻が関係した2例があった。


〔表1〕40才以上の事故ダイバーの誘因→背景→結果→件数

誘因
背 景
結 果
件数
疲弊
冠動脈疾患( CAD )
心筋梗塞、吸水性肺炎
高血圧、心肥大
高血圧性心疾患、不整脈
脂質代謝異常、肥満
粥状硬化、脳梗塞
腎不全(血液透析)
虚血性心疾患、肺水腫
喘息、COPD
溺水、吸水性肺炎、肺水腫
加齢、COPD
溺水、吸水性肺炎、肺水腫
持久力低下、加齢、身障
溺水、吸水性肺炎、肺水腫
肺嚢腫
肺気圧外傷
AGE 、縦隔気腫、心タンポナーデ
動脈瘤
くも膜下出血
神経原性排水種、コイル塞栓術





 40才以下の成人ダイバーは、事故の三大誘因に

    ・ パニック
    ・ 過換気症候群
    ・ 急浮上

があり、多くは減圧病(DCI)の中の動脈空気塞栓症(以下、AGE)の発症、溺水、いずれも吸水性肺炎、肺水腫を起こ
し重大化をもたらしている。また、


〔表2〕40才以下の事故ダイバーの誘因→背景→結果→件数

誘因
背 景
結 果
件数
パニック
DCI  ( AGE )
溺水、意識障害 (AGE)、吸水性肺炎
過換気
潜性意識障害
溺水、意識障害、吸水性肺炎、肺水腫
急浮上
DCI  ( AGE )
溺水、意識障害 (AGE) 、肺水腫
潜水過誤
深海意識障害
DCS 、溺水、溺死、内耳性 DCS  ?
糖尿病
低血糖症
意識障害
通気障害
海水吸引、溺水
溺水、吸水性肺炎
その他
溺水
意識障害、溺死




5.考察

 平成14年から5ヵ年の伊豆半島におけるレジャーダイビング事故の内訳を、米国DAN(潜水緊急情報網)の2006
年次報告における死亡事故83人の内訳〔心原性 (高血圧性心疾患を含む) 28l、急浮上によるAGE 31l、溺死 
61l〕と比較し、事故に至る身体的要因は似た傾向を示していた。恐らく、この傾向は各国とも共通性があると思われ
る。SPDCの記述資料から事故を医学的に分析した結果、事故の誘因に疲弊(Exhaustion)を挙げなければならない。
疲弊は極度の疲労、性根使い尽くしたという意味で、古くから潜水事故の大きな誘因とされてきた。加齢による持久力
(スタミナ)低下や生活習慣病に伴う持病がダイビング中に予期せぬ疲弊をきたし事故につながってきた。今回の調査
から、40才以上の持ダイバー事故の誘因となった

  (1)疲弊・持久力低下について

検討をしなければならない。また、中高年ダイバーの事故の背景になった、

  (2)冠動脈硬化性疾患
  (3)高血圧性心疾患
  (4)慢性閉塞性肺障害
  (5)自然気胸・肺気圧外傷

について考察を加えなければならなかった。以下、上記(1)〜(5)について以下の考察を行う。



(1)疲弊・持久力低下

 疲弊をもたらす背景には、持病に加え日頃の運動習慣の不足がある。平成17年の厚労省「国民健康・栄養調査」で
1回30分以上を週2回・1年以上実施している者は40〜50才代で3割未満、特に40才代で2割に満たないことから、
事故に遭遇した中高年が大都市居住者で占められていることからも、日頃の運動習慣の欠如のまま、ダイビングを行
っている可能性が指摘されよう。

 持久力はベストコンディションの下でも限界がある。誰もダイビング中に種々のシチュエーションでこの限度をこえてし
まうことがある。自覚しない持病に加齢が重なれば持久力の限度を超え疲弊が襲ってくる。特に、

 ・ 強い波や潮の流れに抗して泳ぎエネルギーを浪費して

 ・ ダイビング中に予期せぬヘビーワークが生じたとき

 ・ スクーバ潜水器の呼吸に抵抗感が増して

 ・ 予期せぬ状況から抜け出す努力が報われない状態に遭遇して

 ダイバーにとって老化とは? 70才台、80才でも安全に深く潜っている事実がある。暦念齢だけで判定はできない。
体のコンディションとスタミナは運動習慣がダイビングにおける機敏さ、運動能力を維持でき疲れない。 持久力の評価
は持病としてCAD、高血圧およびCOPDなどに対するリスク評価によって判定しなければならない。持病があっても日常
生活や中等度の運動負荷でも自覚症状は現れない。私どもが行っているリスク評価スクリーニングの一般生理・生化
学指標を下記の表に示す。


〔表3〕レジャーダイバーのリスク評価指標

 年齢
男性>40才  女性>50才
 悪玉コレステロール ( LDL )
>150mg/dl
 善玉コレステロール ( HDL )
< 40mg/dl
 血圧
>140mmHg / >90mmHg
 糖尿病 HbA1C
> 6.1
 BMI
> 25
 腹囲
男性>85cm  女性>90cm



上表の項目に一つでも該当する者に対しては、2次的な精査を実施すべきである。

非該当年齢であっても、脂質代謝異常、血圧、血糖値及び体格指数で閾値を超えているものに対しては、中高年同様
の心肺機能検査は必須である。

このスクリーニングはダイビングを安全に遂行できる心肺機能の質的評価を定量的に把握できない。このために心肺
機能検査を静と動の両面から行わなければならない。

 スクーバダイビングの運動量は8〜9METS(9MTETS=540`i・酸素消費は1.8g/分、最大酸素摂取量に対し
成人男子で60%に相当。レジャーダイバーは、9METSの最大1.5倍、12METS上を目標レベル値にする。少なくとも
40才までなら、12METSをクリアすべき。40才以上の人で運動習慣がなければ8〜9METSの運動をしばらく続けれ
ば息切れする。

当ダイバーズクリニックではスクリーニングでCADや高血圧性心疾患が疑われるケースでは、CADの評価のため、トレ
ッドミルで「Bruceのプロトコール」の3ステ−ジ(5.5`/時・勾配14l・3分)を適用〔図1-A〕、負荷段階で心電図に虚
血性変化があれば直ちに中止すべきである。このほか、MモードCTスキャンで左室肥大による心筋疾患の有無を検索
することにしている。心エコーで注意してみているのは、左室壁厚(LVT)、心拍出量(EF)及び弁血流などである。
〔図1-A〕はトレッドミルを用いた運動負荷心電図、〔図1-B・C〕は心エコー図による心機能画像(70才の非ダイバー)
である。



        

            〔図1-A〕               〔図1-B〕               〔図1-C〕

        〔図1-A〕ブルース法による運動負荷心電図  
        〔図1-B・C〕70才男性(非ダイバー心エコー検査
        〔左室壁厚大(LVT)、心拍出量(EF)やや低下があるも大動脈弁血流はよく保たれている〕




(2)冠動脈硬化性疾患(CAD)

 CADは心筋に酸素・栄養を与える血管にアテローム(粥状)硬化が起こり血流低下を来たしている状態に、狭心症及
び心筋梗塞を合わせた用語で、虚血性心疾患と同意語で使われる。アテローム硬化は生後まもなく始まり、加齢と生
活習慣で成人以後の年齢層でだれでも見られるが、脂質代謝異常、高血圧、喫煙と関わりが強い。

 各国でCADは中高年ダイバーの死亡事故統計で20〜30lを占めている(DANヨーロッパ、2005)。CADは脂質代謝
異常の有無が指標となる。40〜74才で、メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)が疑われる人、及び同予備群とされる
人の割合は、男性で2人に一人、女性は5人に一人、推計1600万人とされる〔厚労省「国民衛生の動向 2006」〕。こ
の年齢層のレジャーダイバーにもこの比率が適用できる。CADリスクは年齢(>40才)が重要なキーファクター。CADリ
スクは心血行状態の把握が必要である。CADリスクは体のコンディションの改善で低減できる。体のコンディションは運
動による持久力の向上で改善できる。


(3)高血圧(Hypertension)

  高血圧状態という慢性負荷により、心臓の収縮力を高めて代償するため心肥大が起こる。
心肥大はダイビング中に、

 −運動量が急激に増したとき、高血圧者の心筋は酸素消費量の増加に応ぜず、心筋虚血常態となる
 −高血圧の急性症状は、非常に高い血圧の出現、脳血管障害であるが、高血圧の慢性症状は、CADを伴うことが
   多い

  血を「軽症140〜160/〜90」及び「中等症160〜180/〜90」なのに「正常または正常高値域」にコントロール
(降圧剤服用、運動習慣、ダイエットで)したいないダイバーのダイビング中のリスクは?

 −通常の生活では自覚症状がない
 −労作や過労で易疲労感、息切れがする
 −労作や過労で重篤な不整脈の出現をみる
 −労作や過労で狭心症の発症をみる
 −労作で急性肺水腫を伴う心不全(左室不全)をみる
 −コントロールされていない高血圧ダイバーで「浸水性肺水腫」を招く

 当クリニックのダイバー検診で自覚症状がない不整脈があるダイバーが時々みえるので、器質的疾病(冠動脈疾
患、高血圧性心疾患、心筋症など)が無いこと確認するため精査を行っている。

 心臓の規則正しいリズムの外に、心房ペースメーカーとは別の刺激で異所性収縮が起こる場合である。
 ダイバーで期外収縮が常に見られるが自覚症状がまったく無い場合に潜水可否の診断が必要になる。〔図1-A.B.C.〕
は同一人の24時間ホルター心電図、心エコー図検査結果である。


      

         図2-A〕2連発期外収縮       〔図2-B〕左室壁厚・心拍出量とも正常      〔図2-C〕心弁口血流正常


(4)慢性閉塞性肺障害(COPD)

 慢性気管支炎、肺気腫、及び慢性気管支喘息があり、肺機能検査で閉塞性換気障害パターン示す場合を慢性閉塞
性肺障害(COPD)という。

 −肺のガス交換が不十分となり、換気が悪い状態。労作や過労で息切れする。疲弊をもたらす。
 −喫煙、遺伝的素因、大気汚染が関係:中高年にかなり見られる
 −COPDの人がダイビングすべきかどうか?

  ・ 喘息もちと同じいみがある。喘息もちと同様に外部刺激に対し気道過敏性による換気障害パターンを示
  ・ ダイビング浮上時にエアートラップ(細気管支の空気溜り)によるAGEリスクがある
  ・ 最近の研究からCOPDダイバーにAGEの発症が多いことが分かってきた。
  ・ COPDの肺の不完全換気エリアが、空気溜り(一種の肺嚢腫)となってAGEを発症する可能性が指摘さ
    れている

 COPDを有する人は運動を維持する能力(換気予備能=持久力)が欠けているが、平時には見分けが付かない。
COPDを判別するには肺機能検査で%肺活量(%VC)が80l以上、一秒率(%FEV1)が70l以上の範囲を逸脱して
いる場合である〔図3-A〕。この範囲は成人の場合であり、ダイバーには%肺活量(%VC)>80l 、
一秒率(%FEV1.0 )>85% 、一秒率(%FEV1.0)/努力性肺活量(%FVC)>85lを推奨している。肺換気能が推奨
範囲にあるかどうか確認しなければならない。〔図3-B〕はCOPDを疑っているのではなく、42才中年ダイバーの肺換気
能の標準を紹介するものである。この被験者は検査結果から潜水適の判定が行われている。



    

                   〔図3-A〕被験者の機能検査結果       〔図3-B〕被験者(左)の評価図




5)自然気胸・肺気圧外傷

 気胸(Pneumothorax)は肺胞の奇形ともいうべき嚢腫〔チスト(Cyst)、ブラ(Bulla)〕がダイビング中の肺の過膨張で破
れ(肺気圧外傷)、気胸を起こす。ダイビング中の気胸の発症では、縦隔気腫、脳動脈空気塞栓(AGE)を併発する場
合があり、RSTC〔リクレーションスクーバ訓練協議会(RSTC: The Recreational Scuba Training Council)〕の身体適性
標準では潜水禁忌とされている 

 −通常生活の中で発症するのを自然気胸という
 −気胸は長身やせ・胸部扁平体質の青年に10台後半の発症が多い。
 −気胸は肺の過膨張が誘因となってブラが破れ、胸膜の側壁と肺を包む胸膜の間に空気が侵入したため、
   肺が虚脱(Collapse)した状態で咳嗽、胸痛、呼吸苦を示す
 −ブラの形成は成長期に、骨の急成長に肺の成長が間に合わず、肺が引き伸ばされてしまってできるとも言
   われている
 −成人男性の6lにブラの存在が確認されている、ダイバー候補者の検診で重要なチェックポイントである
 −自然気胸の再発は50l、再発なし50lに安全を賭ける判断が難しい
 −通常の胸部X線撮影では、ブラが大きい場合には上肺野(中肺野にもたまにある)にブラを発見できる場合
   がある。
 
 自然気胸の既往歴を有するダイバーに対するダイビングの可否の判断が難しい。

 ダイバー同様、肺気圧外傷のリスクに曝される航空機パイロットは、最近の研究成果から、胸部所見で条件付き可
の判定がされるようになった。国交省の「航空身体検査」では、自然気胸既往歴者は、開胸手術後2ヶ月、内視鏡手術
で1ヶ月経過した後、呼吸機能検査で合格した者は航空業務可、手術を受けていない場合は胸部CT (肺尖から2ab
を5_b間隔)の画像所見の判定を待つとされている。

 レジャーダイバーの自然気胸既往者を今までどおり、絶対禁忌で通すことはできないと言う意見がでてきた。 自然
気胸で治癒したケースの術後経過について、

 −再発は胸腔鏡(内視鏡)手術で5l、開胸手術で2〜3l(日本胸部外科学会)
 −レジャーダイバーでは、内視鏡による胸膜擦過術で8l、肺切除術では再発は殆ど無かった
   (米国DAN 2005)
 −ダイビングで肺気圧外傷は海面近くの浮上で発症している。ブラもちダイバー、喘息もちダイバー、COPD
   ダイバーは同じリスクを背負っている
 −自然気胸既往者は海面近くで気道を閉鎖しないスキルが必要である

 米国DANのピーター・ベネット(Peter Bennett)、同医療部長フランス・クローネ(Frans Cronje)らに近
著「スクーバダイバー及びインストラクターのための潜水医学適性評価」(2006)で気胸既往者の潜水禁忌は:

  −気胸発症後3ヶ月以内
  −気胸で肺虚脱を有するビギナーダイバー
  −エキスパートダイバーでは肺切除後に肺虚脱を示すケース

 としている。

 ダイビングで気胸を発症するケースより、普通の生活状態で発症するケースが圧倒的に多い。当ダイバーズクリニッ
クは、肺機能検査で合格ラインを超えているベテランダイバーに対し、肺尖から2abを1.2_b間隔で検索し評価し
ている。〔図4-A.B.C〕は自然気胸の既往を有する男性インストラクターで肺機能検査・一秒率が92lの一例を示す。
通常の胸部X線検査では上肺野に異常を見つけられなかったが、1.2_bCTスキャン画像分析で、胸膜と癒着した
φ7_bのブラが鮮明に写し出されている。



          

     〔図4-A〕肺尖部に異常は見られない   〔図4-B〕右上肺野に気胸跡と胸膜癒着像     〔図4-.C〕上肺にブラがφ7mmブラ



 気胸の発症リスクを軽視してはならないが、ベテランダイバーには、彼らのダイビングスキルに海面浮上時に深度5
乃至3bから、気道閉塞を起こさないよう潜水艦要員脱出訓練時の発声法を行うよう求めている。その上で慎重な判
断を行っている。



5.まとめ

 NPO法人・静岡県ダイバーズ協議会が収集した2002年から2007年における伊豆半島地域における潜水事故記
録簿から潜水身体適性が深く関っていることが明らかであった。40才以上の中高年では、加齢による持久力低下の
ほか、冠動脈硬化性疾患(CAD)、高血圧性心疾患および慢性閉塞性肺障害(COPD)が、また自然気胸再発、脳動脈
瘤破締が各1例を占めた。
 
 他方、40才以下ではパニック、過換気症候群、急浮上が背景となって動脈空気塞栓(AGE)、溺水を来たし、すべて
吸水性肺炎、肺水腫に移行している。中高年ダイバーの潜水事故の誘因となった疲弊・持久力低下、及び事故の背景
になった冠動脈硬化性疾患、高血圧性心疾患、慢性閉塞性肺疾患、ならびに自然気胸・肺気圧外傷について潜水身
体適性面から考察を行った。



 謝辞

 本稿を作成するにあたり、多大なご支援・ご協力を賜ったNPO法人・静岡県ダイバーズ協議会に感謝を申し上げます







参考資料

1.山口徹ほか監修:今日の治療指針2008年版、医学書院、平成19年12月
2.岩本安彦ほか監修:メタボリックシンドロームUp To Date、日本医師会 平成19年6月
3.Peter Bennettほか:Assessment of Diving Medical Fitness for Scuba Divers and Instructors, 
  Best Publishing Company, 2006
4.Bove AA: Bove and Davis, Diving Medicine,Saunders,2004
5.大岩弘典:新しい潜水医学、水中造形センター 2003
6.大岩弘典:事故を起こさないための潜水医学、水中造形センター、2007








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